
生成AIが変えるシステム開発 ― 2026年の最新トレンドと活用法

近年、生成AIの進化により、システム開発の進め方が大きく変わりつつあります。これまで生成AIは、プログラムコードの生成や文章作成など、開発者の一部の作業を補助する用途が中心でした。しかし2026年現在では、要件の整理や設計、プログラミング、テスト、レビューなど、システム開発のさまざまな工程でAIを活用する動きが広がっています。さらに注目されているのが「AIエージェント」です。人間が一つひとつ指示を出して回答を得るだけではなく、AIに一定のタスクを任せ、必要な情報を確認しながら複数の作業を進めてもらうという活用方法が現実的になってきました。
一方で、生成AIを導入すればシステム開発のすべてを自動化できるわけではありません。業務要件の整理やシステム全体の設計、セキュリティへの配慮、生成されたコードの品質確認など、人間による判断が重要な領域も多く残されています。本記事では、2026年における生成AIとシステム開発の最新動向を踏まえながら、生成AIを活用できる開発工程、AIエージェントによる変化、メリットやリスク、企業が導入する際のポイントまでわかりやすく解説します。
| ポイント | 結論 |
|---|---|
| 2026年の変化 | 生成AIはコード生成などの「開発支援」から、AIエージェントを活用して複数の開発タスクを進める段階へと活用範囲が広がっています。 |
| 活用できる工程 | 要件整理、設計・仕様書作成、プログラミング、テスト、コードレビューなど、システム開発のさまざまな工程で活用できます。 |
| 人間の役割 | AIですべてを自動化するのではなく、業務理解や要件定義、設計、レビュー、品質判断などは引き続き人間が担うことが重要です。 |
| 導入のポイント | まずは補助的な業務や小規模なPoCから始め、セキュリティや利用ルール、レビュー体制を整えながら段階的に活用範囲を広げることが大切です。 |
目次
1. 2026年、生成AIでシステム開発はどう変わっている?
– 「コードを生成するAI」から「開発を進めるAIエージェント」へ
– 生成AIがシステム開発で注目される背景
– AIによって変わるエンジニアの役割
– 生成AIですべての開発を自動化できるわけではない
2. 生成AIはシステム開発のどこで活用できる?
– 要件定義・情報整理
– 設計・仕様書作成
– プログラミング・コード生成
– テスト・コードレビュー・デバッグ
3. 2026年のシステム開発で注目される「AIエージェント」とは?
– AIエージェントと従来の生成AIの違い
– AIエージェントによる開発タスクの自律化
– 複数のAIエージェントが連携する開発
– 人間は「実装」から「指示・判断・レビュー」へ
4. 生成AIをシステム開発に活用するメリット
– 開発スピード・生産性の向上
– エンジニアの作業負担を軽減
– ドキュメント作成やテストの効率化
– 属人化の軽減とナレッジ活用
5. 生成AIをシステム開発に利用する際の課題・リスク
– AIが生成したコードが正しいとは限らない
– セキュリティ・機密情報の取り扱い
– 著作権・ライセンスへの注意
– AIに依存しすぎることによる新たなリスク
6. 生成AI時代でも人間が担うべきシステム開発の仕事
– 業務課題を整理して要件を決める
– システム全体の設計・アーキテクチャを考える
– AIが生成した成果物をレビュー・検証する
– 業務を理解したうえで最終判断を行う
7. 企業が生成AIをシステム開発に導入する方法
– まずは開発業務の補助から始める
– 小規模なPoCで効果を検証する
– AI利用のルール・ガイドラインを整備する
– 効果を測定しながら対象範囲を広げる
8. 生成AIを導入する前に整えておきたい開発環境
– ソースコード・仕様書・ドキュメントを整理する
– テスト・レビューの仕組みを整える
– AIに渡してよい情報の範囲を決める
– AIを活用しやすい開発プロセスをつくる
9. 生成AIによってシステム開発会社の選び方は変わる?
– 「AIを使っているか」だけで判断しない
– AIと人間の役割分担を確認する
– 業務理解・要件定義力がより重要になる
– 開発後の保守・改善まで考えて選ぶ
10. 生成AI時代のシステム開発は今後どうなる?
– AIエージェントの活用範囲はさらに広がる
– エンジニアに求められるスキルが変化する
– 開発期間・コストの考え方も変わる
– 「AIを使うこと」ではなく「AIで何を実現するか」が重要になる
11. まとめ|2026年は生成AIを「開発支援」から「開発プロセス」に取り入れる時代へ
1.2026年、生成AIでシステム開発はどう変わっている?
生成AIというと、ChatGPTなどに質問をしたり、文章やプログラムコードを作成してもらったりする使い方をイメージする方も多いでしょう。システム開発の現場でも、当初は「コードを書いてもらう」「エラーの原因を質問する」といった開発者個人の作業を支援する用途が中心でした。
しかし2026年現在では、その活用範囲がさらに広がっています。単純なコード生成だけではなく、既存のソースコードを確認したうえで修正案を作成したり、テストを実行したり、複数の工程にまたがる開発タスクをAIに任せたりする使い方も登場しています。生成AIは、システム開発の一部で利用する「便利なツール」から、開発プロセスそのものを支援する存在へと変化しつつあるのです。

「コードを生成するAI」から「開発を進めるAIエージェント」へ
2026年のシステム開発における大きなトレンドの一つが、AIエージェントの活用です。
従来の生成AIでは、「この処理を行うコードを作成してください」と指示し、生成されたコードを開発者がコピーして利用するといった使い方が一般的でした。AIエージェントでは、こうした一問一答型の使い方からさらに進み、AIが開発環境やファイルなどを確認しながら、複数の作業を連続して進めることができます。例えば、開発者が修正したい内容を伝えると、AIエージェントが既存のコードを確認し、変更が必要な箇所を探し、コードを修正し、テストを実行するといった流れです。実際に2026年には、AIコーディングエージェントが大規模なコードベースを理解し、ツールを利用して変更を加え、テストを実行し、人間によるレビューの準備まで行えるようになっています。
つまり、
人間が作業ごとにAIへ質問する
という使い方から、
人間が目的や条件を伝え、AIにまとまった作業を任せる
という使い方へと変化しているのです。
ただし、AIエージェントがすべてを自動的に判断してシステムを完成させるわけではありません。どのようなシステムを作るのか、どの範囲をAIに任せるのか、生成された成果物に問題がないかといった重要な判断は、引き続き人間が担う必要があります。
生成AIがシステム開発で注目される背景
生成AIがシステム開発で注目される理由の一つは、開発工程には多くの情報整理や繰り返し作業が存在するためです。システム開発というと、プログラムを書く作業をイメージしがちですが、実際にはそれだけではありません。顧客から要望を聞き取って整理したり、仕様書を作成したり、既存のプログラムを確認したり、テストケースを作成したり、不具合の原因を調査したりと、さまざまな工程があります。こうした工程の中には、生成AIが得意とする「大量の情報を整理する」「文章やコードのたたき台を作る」「一定の条件に沿って候補を出す」といった作業が数多く含まれています。そのため、生成AIを適切な工程に取り入れることで、エンジニアが一からすべての作業を行う場合と比較して、作業時間を短縮できる可能性があります。
さらに2026年には、AIが一つの回答を生成するだけではなく、ツールを使いながら長時間のタスクを進められるようになったことも大きな変化です。実際にAIエージェントの利用では、人間であれば1時間以上かかると推定されるタスクをAIへ任せるケースも増えています。このような技術の進化によって、生成AIの活用対象が「ちょっとした作業の効率化」から「開発プロセス全体の生産性向上」へと広がっているのです。
AIによって変わるエンジニアの役割
生成AIの活用が広がると、「将来的にエンジニアが必要なくなるのではないか」と考える方もいるかもしれません。しかし、現時点ではエンジニアの仕事がなくなるというよりも、担当する仕事の比重が変化していくと考えた方が適切です。これまでエンジニア自身が時間をかけて行っていたコード作成や調査、テストなどの一部をAIに任せられるようになれば、人間はより上流の判断に時間を使いやすくなります。
例えば、
「このシステムで何を解決するのか」
「利用者にとって使いやすい仕組みになっているか」
「既存システムとどのように連携するのか」
「セキュリティや性能に問題はないか」
「AIが作成したコードを本番環境で利用して問題ないか」
といった判断です。
特に企業の基幹システムでは、単にプログラムが正常に動くだけでは十分ではありません。販売管理、在庫管理、生産管理、会計など、それぞれの企業が持つ業務ルールを理解し、それをシステムへ正しく落とし込む必要があります。生成AIによって実装作業を効率化できるようになるほど、エンジニアには「コードを書く力」だけでなく、業務を理解する力、要件を整理する力、設計する力、AIの成果物を評価する力がより重要になっていくと考えられます。
生成AIですべての開発を自動化できるわけではない
生成AIの性能が向上しているとはいえ、システム開発を完全にAIへ任せられる段階ではありません。生成AIは、与えられた情報をもとにコードや文章を生成できますが、その内容が必ず正しいとは限らないためです。例えば、生成されたプログラムが一見問題なく動いていても、特定の条件でエラーが発生したり、セキュリティ上の問題が含まれていたりする可能性があります。また、企業の業務には、資料やソースコードだけでは判断できないルールもあります。「なぜこの処理が必要なのか」「例外が発生した場合は誰が判断するのか」といった背景は、実際に業務を行っている人へのヒアリングが必要になることもあります。
そのため、生成AIをシステム開発へ取り入れる際には、
AIに任せる工程と、人間が判断する工程を分けること
が重要です。
生成AIを「人間の代わりにシステムを作るもの」と捉えるのではなく、エンジニアの作業を支援し、開発プロセスを効率化するための手段として活用することが現実的でしょう。
2.生成AIはシステム開発のどこで活用できる?
生成AIは、プログラミングだけに利用するものではありません。システム開発は一般的に、要件定義、設計、開発、テスト、リリース、保守・運用といった複数の工程で進められます。生成AIは、それぞれの工程における情報整理や成果物の作成、確認作業などを支援できます。特に、最初から完成品をAIに作らせるのではなく、人間が判断するための「たたき台」を短時間で作成する用途は、生成AIを活用しやすい領域です。
要件定義・情報整理
システム開発の最初の段階では、「何を作るのか」を明確にする必要があります。
例えば顧客から、
「Excelで行っている受発注管理をシステム化したい」
「同じ情報を複数のシステムへ入力する作業をなくしたい」
「在庫状況をリアルタイムで確認したい」
といった要望があったとします。
しかし、こうした要望をそのままプログラムへ落とし込むことはできません。現在どのような業務を行っているのか、誰が利用するのか、どのデータが必要なのか、例外的な処理はあるのかなどを整理し、システムに必要な要件を決める必要があります。生成AIは、ヒアリング内容や既存資料を整理したり、確認すべき項目を洗い出したり、要件の抜け漏れを確認するための補助として活用できます。
例えば会議の内容から、
「現在の業務」
「抱えている課題」
「システム化したい範囲」
「追加で確認が必要な事項」
などに分類して整理すれば、その後の要件定義を進めやすくなります。
ただし、AIが整理した内容をそのまま要件として確定するのではなく、最終的には顧客や担当者と認識を合わせることが重要です。
設計・仕様書作成
要件が決まった後は、それをどのようなシステムとして実現するのかを設計します。画面にどの項目を表示するのか、どのような操作でデータを登録するのか、データベースへ何を保存するのか、他のシステムとどのように連携するのかなどを具体化していく工程です。この工程でも生成AIを活用できます。例えば、整理した要件をもとに仕様書のたたき台を作成したり、必要な画面や機能を洗い出したり、仕様同士に矛盾がないか確認したりする用途です。また、文章だけでは完成イメージを共有しにくい場合には、画面イメージやモックを早い段階で作成し、顧客と認識を合わせる方法もあります。システム開発では、開発が進んでから「想像していた画面と違う」「この機能も必要だった」と分かるほど、修正に必要な工数が大きくなります。生成AIを利用して初期段階から複数の案やたたき台を作りやすくすることで、開発前の認識合わせを効率化できる可能性があります。
一方で、AIが作成した仕様書には、要件に存在しない機能が追加されていたり、重要な条件が抜けていたりする可能性があります。あくまで作成支援として利用し、設計内容そのものはエンジニアが確認する必要があります。
プログラミング・コード生成
生成AIがシステム開発で特に活用されている領域の一つが、プログラミングです。開発者が実現したい処理や条件を伝えることで、コードのたたき台を生成したり、既存コードの修正案を提示したりできます。
例えば、
「入力された内容をチェックする処理を作成する」
「データベースから条件に一致するデータを取得する」
「既存コードを読みやすく整理する」
「エラーが発生しているコードの原因を調べる」
といった作業を支援できます。
さらに現在のAIコーディングエージェントでは、一部分のコードを生成するだけでなく、既存のコードベースを確認しながら複数のファイルを変更し、必要なテストまで実行する使い方も可能になっています。
この点は、2025年頃までの「生成AIにコードを書いてもらう」という活用から大きく進んだ部分です。ただし、生成されたコードをそのまま本番システムへ組み込むことは避けるべきです。コードが正常に動くかだけではなく、セキュリティ、性能、保守性、既存機能への影響なども確認する必要があります。生成AIによってコードを書く時間を短縮できても、品質を保証する責任までAIに移るわけではないという点は押さえておく必要があります。
テスト・コードレビュー・デバッグ
システムを開発した後は、想定通りに動作するかを確認するテストが必要です。生成AIは、このテスト工程でも活用できます。例えば仕様書やプログラムをもとにテストケースの候補を作成したり、正常な操作だけでなく異常な入力や境界値など、見落としやすいケースを洗い出したりする用途があります。
また、コードレビューの補助として、
「不具合につながる可能性がある処理はないか」
「重複している処理はないか」
「より分かりやすくできる部分はないか」
などを確認することもできます。
不具合が発生した際には、エラーメッセージやログ、関連するコードをもとに原因の候補を整理させることで、調査時間を短縮できる可能性もあります。
さらにAIエージェントでは、コードを修正した後にテストを実行し、失敗した場合には結果を確認して再度修正するといった、複数ステップにまたがる作業も可能になりつつあります。そのため2026年の生成AI活用では、「コードを書いてもらうこと」だけではなく、開発から検証までを一連の流れとして支援してもらうことが重要なポイントになっています。
ただし、AIによるレビューやテストだけで品質を保証することはできません。特に基幹システムなど業務への影響が大きいシステムでは、人間によるレビューや実際の業務を想定した検証と組み合わせる必要があります。
エイ・エヌ・エスでも、生成AIを単純なコード生成ツールとして利用するだけではなく、要件のチェック、モック作成、コード作成、テストなど、システム開発の各工程で活用しています。重要なのは、すべてをAIに任せることではなく、AIを活用することで効率化できる工程と、エンジニアが判断・確認すべき工程を分けることです。生成AIを開発プロセスの中に適切に組み込むことで、開発の効率化を図りながら、システムに求められる品質を確保していくことが重要だと考えています。
| 開発工程 | 生成AIの主な活用例 |
|---|---|
| 要件定義・情報整理 | ヒアリング内容の整理、確認項目の洗い出し、要件の抜け漏れ確認 |
| 設計・仕様書作成 | 仕様書のたたき台作成、画面・機能の洗い出し、モック作成 |
| プログラミング | コード生成、既存コードの修正、エラー原因の調査 |
| テスト・レビュー | テストケースの作成、コードレビュー、不具合・原因の調査 |
3.2026年のシステム開発で注目される「AIエージェント」とは?
2026年の生成AI活用を考えるうえで、特に注目したいのが「AIエージェント」です。
従来の生成AIは、人間が質問や指示を入力し、それに対してAIが文章やコードを生成する使い方が中心でした。一方、AIエージェントは、与えられた目的を達成するために必要な作業を考え、ツールや情報を利用しながら複数のステップを進めていくことができます。システム開発においても、コードの生成だけではなく、既存システムの調査、複数ファイルの修正、テストの実行など、よりまとまった開発作業をAIに任せられるようになってきました。これによって、「一つの作業をAIに手伝ってもらう」という活用から、「一定の開発タスクをAIと分担する」という活用へと変化しつつあります。
AIエージェントと従来の生成AIの違い
従来の生成AIとAIエージェントの大きな違いは、AIが対応する作業の範囲にあります。従来の生成AIでは、例えば「このエラーの原因を教えてください」「この処理を行うコードを書いてください」と質問し、その回答を人間が確認して次の作業を行うという使い方が一般的です。
つまり、
人間が指示する
↓
AIが回答する
↓
人間が確認する
↓
次の指示を出す
という流れです。
一方、AIエージェントでは、「この不具合の原因を調査して修正する」といった、ある程度まとまった目的を与えることができます。AIは必要に応じて関連するファイルを確認し、原因となっている箇所を探し、コードを変更し、テストを実行するといった複数の作業を進めます。例えば、ある画面でデータを登録できない不具合が発生している場合、関連するコードやエラー内容を確認し、修正候補を作成し、変更後の動作をテストするといった流れです。もちろん、利用するAIエージェントや与えられている権限によって、実行できる作業の範囲は異なります。重要なのは、生成AIが「質問に回答するツール」だけではなく、目的に応じて複数の作業を進める存在へ発展していることです。
| 比較項目 | 従来の生成AI | AIエージェント |
|---|---|---|
| 基本的な使い方 | 人間の質問や指示に対して回答・生成する | 与えられた目的に沿って必要な作業を進める |
| 作業の進め方 | 基本的に人間が作業ごとに指示する | 必要な手順を考えながら複数の作業を進める |
| 開発での活用例 | コード生成、質問への回答、文章作成など | コード調査・修正、テスト実行、結果確認など |
| 外部ツールとの連携 | 回答や生成が中心 | 開発環境や各種ツールを利用して作業できる |
| 人間の役割 | 質問・指示を出し、生成結果を確認する | 目的や条件を設定し、作業結果をレビュー・判断する |
AIエージェントによる開発タスクの自律化
AIエージェントの登場によって、これまでエンジニアが一つひとつ行っていた作業の一部を、まとまった単位でAIに任せられる可能性が広がっています。例えば、開発現場では次のような活用が考えられます。既存コードの調査、軽微な不具合の修正、テストコードの作成、テストの実行、エラー原因の調査、ドキュメントの更新などです。従来であれば、エンジニアが対象となるファイルを探し、コードを読み、修正し、テストを実施して結果を確認する必要がありました。
AIエージェントでは、こうした複数の作業を一つのタスクとして依頼できるようになってきています。特に大規模なシステムでは、「どのファイルに対象となる処理が書かれているのか」を探すだけでも時間がかかる場合があります。AIがコードベースを確認し、関連する箇所を整理できれば、エンジニアは調査にかける時間を短縮できます。
また、単純な修正や繰り返し作業をAIに任せることで、人間は要件の検討や設計、品質確認など、より判断が必要な業務に時間を使いやすくなります。ただし、「自律的に作業できる」ことと「人間による確認が不要になる」ことは同じではありません。AIが変更したコードによって既存機能に影響が出る可能性もあります。特に企業の基幹システムでは、小さな変更が受発注や在庫、請求など別の業務へ影響することも考えられます。そのため、AIエージェントを活用する場合も、作業範囲や権限を適切に設定し、最終的な確認や承認を人間が行う仕組みが重要です。
複数のAIエージェントが連携する開発
今後のシステム開発では、一つのAIだけにすべての作業を任せるのではなく、役割の異なるAIエージェントを組み合わせる考え方も広がる可能性があります。人間の開発チームでも、プロジェクトマネージャー、設計担当者、プログラマー、テスト担当者など、それぞれ役割を分担して開発を進めます。AIエージェントについても同様に、
「仕様を整理するAI」
「プログラムを作成するAI」
「コードを確認するAI」
「テストを実行するAI」
といったように、それぞれ異なる役割を持たせて連携させることが考えられます。
例えば、仕様を整理した結果をもとに別のAIがコードを作成し、そのコードをさらに別のAIがレビューし、テスト結果を確認する、といった流れです。このような複数のAIエージェントを連携させる仕組みは「マルチエージェント」と呼ばれることもあります。ただし、AIの数を増やせば必ず開発効率や品質が向上するわけではありません。AI同士で誤った情報を引き継いでしまったり、役割分担が複雑になることで、かえって管理が難しくなったりする可能性もあります。そのため、企業がAIエージェントを導入する場合には、「どの工程をAIに任せると効果があるのか」を見極めることが重要です。AIエージェントを増やすこと自体を目的とするのではなく、実際の開発工程に合わせて必要な部分へ取り入れる必要があります。
人間は「実装」から「指示・判断・レビュー」へ
AIエージェントの活用が進むことで、システム開発における人間の役割も変わっていくと考えられます。これまでは、エンジニア自身がコードを書き、テストを行い、問題があれば修正するという実装作業に多くの時間を使ってきました。今後、その一部をAIに任せられるようになると、人間には「AIに何をさせるのかを決める」「AIが作成したものを評価する」という役割がより強く求められるようになります。例えば、「顧客から依頼された機能をそのまま追加してよいのか」「既存システムへの影響はないか」「別の方法で実現した方が使いやすくないか」といった判断です。こうした判断には、プログラミングの知識だけではなく、顧客の業務やシステム全体を理解する力が必要になります。また、AIへの指示が曖昧であれば、期待した成果物が得られない可能性があります。そのため、要件や条件、制約を明確に整理してAIへ伝える力も重要になります。生成AIやAIエージェントが高度になるほど、エンジニアは単に「自分でコードを書く人」ではなく、AIを含めた開発プロセス全体を設計し、成果物の品質を判断する役割へと変化していくでしょう。
4.生成AIをシステム開発に活用するメリット
生成AIをシステム開発へ取り入れる目的は、単に「AIを使うこと」ではありません。開発工程の中には、情報整理、コード作成、テスト、ドキュメント作成など、多くの時間を必要とする作業があります。こうした業務の一部を生成AIで支援することで、開発者がより重要な判断や設計に時間を使えるようになります。また、生成AIの効果は、プログラミング時間の短縮だけに限りません。開発に必要な情報を整理したり、ドキュメント作成を補助したり、過去の情報を探しやすくしたりすることで、開発プロセス全体の効率化につながる可能性があります。ここでは、システム開発に生成AIを活用する主なメリットを見ていきます。
開発スピード・生産性の向上
生成AIを活用する大きなメリットの一つが、開発作業の効率化です。例えば、簡単なプログラムの作成、既存コードの修正案の作成、テストケースの洗い出し、エラーの原因調査などは、これまでエンジニア自身が一つひとつ行っていました。生成AIを利用すれば、こうした作業のたたき台を短時間で作成できます。特に、似たようなコードを繰り返し作成する作業や、既存の処理を別の形式へ書き換える作業などは、AIと相性のよい領域です。
また、AIエージェントを利用する場合には、コード生成だけでなく、既存ファイルの確認から修正、テストまでを一つのタスクとして依頼できる場合もあります。これによってエンジニアが細かな作業に費やす時間を減らし、設計や要件整理など、人間の判断が重要な業務へ時間を振り分けられるようになります。
ただし、生成AIを導入すれば必ず開発期間を短縮できるわけではありません。AIが生成した成果物の確認や修正に時間がかかれば、期待した効果が得られないこともあります。そのため、「AIを使ったか」ではなく、開発工程全体でどの程度の時間を削減できたのかを確認することが重要です。
エンジニアの作業負担を軽減
システム開発では、すべての業務が高度な設計やプログラミングというわけではありません。既存コードの調査、エラー内容の確認、資料の整理、テストデータの準備など、多くの細かな作業が発生します。一つひとつは小さな作業でも、プロジェクト全体で見ると大きな負担になります。生成AIを活用することで、こうした情報整理や繰り返し作業の一部を効率化できます。例えば、長いエラーログから確認すべき部分を抽出したり、既存コードの処理内容を説明させたりすることで、エンジニアが調査を始めるまでの時間を短縮できます。
また、自分が担当していなかったプログラムを確認する際にも、AIに処理の概要を整理させることで、コードを理解するための補助として利用できます。特に長期間運用されているシステムでは、多くの改修が積み重なり、システム全体を把握することが難しくなっている場合があります。こうした場面でも、AIを調査や情報整理の補助として活用できれば、エンジニアの負担軽減につながります。ただし、AIによる説明が必ず正しいとは限らないため、重要な処理については実際のコードや仕様と照らし合わせて確認する必要があります。
ドキュメント作成やテストの効率化
システム開発では、プログラム以外にも多くの成果物を作成します。要件定義書、仕様書、設計書、テスト仕様書、操作マニュアル、変更履歴などです。こうしたドキュメントは、システムを開発するときだけでなく、リリース後の保守や機能追加を行う際にも重要になります。
一方で、開発を優先するあまり、ドキュメントの作成や更新に十分な時間を確保できないケースもあります。生成AIは、会議内容や既存資料、仕様などをもとに文章のたたき台を作成できるため、ドキュメント作成を効率化する手段として活用できます。例えば、打ち合わせ内容を整理して仕様書の下書きを作ったり、プログラムの変更内容から変更履歴の候補を作成したりする使い方です。
テスト工程でも同様です。仕様をもとにテストケースを洗い出したり、「正常に動作する場合」だけでなく、「入力値が空の場合」「最大値を超えた場合」「権限のないユーザーが操作した場合」など、さまざまなケースを検討する補助として利用できます。人間だけでテスト項目を考えると、担当者の経験によって確認内容に差が生まれる場合があります。生成AIを利用して別の観点から候補を出すことで、見落としていたテスト項目に気づける可能性があります。もちろん、AIが作成したテスト項目をそのまま採用するのではなく、実際の仕様や業務に合わせて取捨選択する必要があります。
属人化の軽減とナレッジ活用
システム開発や保守では、「この機能について分かるのは特定の担当者だけ」という状況が発生することがあります。担当者が長年システムを担当している場合、その人の頭の中には多くの知識が蓄積されています。しかし、その情報がドキュメントとして残っていなければ、担当者の異動や退職によって、システムの仕様や過去の経緯が分からなくなる可能性があります。生成AIは、こうした属人化を軽減するための情報整理にも活用できます。
例えば、過去の仕様書、障害対応履歴、議事録、FAQなどを適切に管理したうえで、必要な情報を検索・整理しやすい仕組みを構築する方法があります。
「以前、同じようなエラーが発生したときはどのように対応したのか」
「この機能はなぜ追加されたのか」
「このシステムと連携しているサービスは何か」
といった情報を探しやすくなれば、特定の担当者だけに問い合わせる必要を減らせる可能性があります。
また、ベテランエンジニアが持つ知識をドキュメントとして整理し、若手エンジニアが参照できるようにすることで、教育や引継ぎにも活用できます。ただし、生成AIを導入するだけで属人化が解消されるわけではありません。そもそも社内に情報が残されていなければ、AIもその情報を利用できません。そのため、仕様書や変更履歴、障害対応の記録などを蓄積し、「AIが利用できる形でナレッジを整備すること」も重要になります。生成AIは、開発者の代わりにすべての仕事を行うものではありません。繰り返し作業や情報整理をAIへ任せ、人間は要件定義、設計、品質判断などに集中する。このように役割を分担することで、生成AIのメリットをシステム開発全体へ広げやすくなります。

5.生成AIをシステム開発に利用する際の課題・リスク
生成AIはシステム開発のさまざまな工程を効率化できる一方で、利用方法によっては新たなリスクを生む可能性もあります。特に企業のシステム開発では、顧客情報や社内情報を扱ったり、受発注や在庫管理など重要な業務に関わるシステムを構築したりすることがあります。そのため、「便利だから使う」というだけではなく、どの情報をAIへ入力してよいのか、生成された成果物を誰が確認するのかなど、利用方法をあらかじめ整理しておくことが重要です。生成AIの特性とリスクを理解し、人間による確認と組み合わせながら活用する必要があります。
AIが生成したコードが正しいとは限らない
生成AIは短時間でプログラムコードを作成できますが、生成されたコードが必ず正しいとは限りません。一見すると問題なく動作するコードであっても、特定の条件でエラーが発生したり、想定していないデータを入力したときに正常に処理できなかったりする可能性があります。また、既存システムの一部分だけをAIに提示して修正させた場合、AIがシステム全体の構造や業務上の背景まで把握できているとは限りません。例えば、一つの画面では正常に動作していても、その変更によって別の機能や外部システムとの連携に影響が出ることも考えられます。特に企業の基幹システムでは、一つのデータが販売管理、在庫管理、請求など複数の業務で利用されている場合があります。そのため、プログラム単体で正しいかだけではなく、システム全体への影響を確認する必要があります。AIが生成したコードについては、人間によるコードレビューやテストを行い、必要に応じて修正したうえで利用することが重要です。生成AIによって「コードを書く作業」は効率化できても、そのコードがシステムの要件を満たし、安全に利用できるかを確認する工程まで省略できるわけではありません。
セキュリティ・機密情報の取り扱い
生成AIを業務で利用する際、特に注意したいのが入力する情報の取り扱いです。システム開発では、ソースコードだけでなく、顧客情報、システム構成、データベースの設計情報、認証に関する情報、社内独自の業務ルールなど、外部へ公開すべきではない情報を扱うことがあります。こうした情報を、利用条件やデータの取り扱いを確認しないまま外部の生成AIサービスへ入力することは避ける必要があります。生成AIサービスによって、入力したデータの保存期間や学習への利用有無、管理方法などは異なります。また、法人向けのサービスでは、個人向けサービスとは異なるデータ保護の仕組みが提供されている場合もあります。
そのため企業で利用する場合には、
「どの生成AIサービスを利用してよいのか」
「どのような情報まで入力できるのか」
「ソースコードを入力してよいのか」
「個人情報や顧客情報をどのように扱うのか」
といったルールを事前に決めておくことが重要です。
また、AIエージェントへ開発環境や外部ツールを操作する権限を与える場合には、入力情報だけでなく、AIがどこまでアクセス・操作できるのかについても管理する必要があります。必要以上の権限を与えず、重要な操作には人間による承認を設けるなど、AIを利用する範囲に応じたセキュリティ対策が求められます。
著作権・ライセンスへの注意
生成AIが作成したプログラムコードを利用する場合には、著作権やソフトウェアライセンスについても注意が必要です。システム開発では、生成AIだけでなく、オープンソースソフトウェアや外部ライブラリなど、さまざまな既存技術を利用することがあります。これらには、それぞれ利用条件やライセンスが設定されているため、商用システムへ組み込む際には条件を確認しなければなりません。生成AIから出力されたコードについても、「AIが生成したから自由に利用できる」と一律に判断するのではなく、利用しているAIサービスの規約を確認し、必要に応じてコードの出所や類似性、利用しているライブラリのライセンスなどを確認することが大切です。
また、AIに既存のソースコードを入力する場合には、そのコードを外部サービスへ入力する権限が自社にあるのかという観点も必要です。例えば、顧客から預かっているソースコードや他社が開発したプログラムを扱う場合、自社の判断だけで外部AIサービスへ入力できるとは限りません。生成AIを開発へ取り入れる際には、技術面だけでなく、契約や社内ルールも含めて利用条件を整理しておくことが重要です。
AIに依存しすぎることによる新たなリスク
生成AIが便利になるほど、「分からないことはすべてAIに聞く」「コードはすべてAIに作らせる」という使い方になってしまう可能性があります。しかし、AIに依存しすぎると、エンジニア自身がコードやシステムの仕組みを十分に理解しないまま開発が進むリスクがあります。特に注意したいのが、AIが生成したコードを「動いたから問題ない」と判断してしまうことです。なぜその処理になっているのか、どのような条件でエラーが発生する可能性があるのか、将来的に変更するとどこへ影響するのかを理解していなければ、保守や改修が必要になった際に対応が難しくなる可能性があります。
また、AIによって短時間で多くのコードを生成できるようになると、人間が確認しなければならないコードの量が増えるという問題も考えられます。生成するスピードだけが上がり、レビューやテストが追いつかなければ、開発全体の品質向上にはつながりません。そのため生成AIを活用する際には、「どれだけ多くのコードを生成できたか」ではなく、開発プロセス全体として品質と生産性が向上しているかを見ることが大切です。AIに任せられる作業は任せながらも、エンジニア自身がシステムを理解し、必要な判断を行える状態を維持することが、生成AI時代のシステム開発では重要になります。
6.生成AI時代でも人間が担うべきシステム開発の仕事
生成AIやAIエージェントの進化によって、システム開発で自動化できる作業は今後も増えていくと考えられます。
しかし、システム開発の目的はプログラムコードを作ることではありません。企業が抱えている課題を整理し、その課題を解決する仕組みをシステムとして実現することが本来の目的です。そのため、コード生成のような作業をAIが担えるようになったとしても、「何を作るべきなのか」「そのシステムが業務に適しているのか」「安全に利用できるのか」といった判断は依然として重要です。生成AIの活用が進むほど、人間には作業そのものではなく、目的を整理し、設計し、成果物を評価する役割が求められるようになります。
業務課題を整理して要件を決める
システム開発では、顧客から伝えられた要望をそのまま機能として実装すればよいとは限りません。
例えば、
「Excelをシステム化したい」
「入力作業を自動化したい」
「AIを導入したい」
という要望があったとしても、それだけでは具体的なシステムを設計できません。
なぜ現在の業務に時間がかかっているのか、誰がどのタイミングで作業しているのか、どの情報を入力し、その情報がその後どこで使われているのかなどを確認する必要があります。場合によっては、顧客が希望していた機能とは異なる方法の方が、根本的な課題を解決できることもあります。生成AIは、ヒアリング内容の整理や確認項目の洗い出しを支援できますが、実際の業務を理解し、何をシステム化すべきかを決めるためには、人間同士のコミュニケーションが重要です。特に企業ごとに異なる業務ルールや例外処理は、既存の資料だけでは分からないこともあります。現場へのヒアリングを通じて背景まで理解し、「依頼されたものを作る」のではなく「何を作れば課題を解決できるのか」を考えることは、人間が担う重要な役割です。
システム全体の設計・アーキテクチャを考える
生成AIは、個別の機能やプログラムコードを作成することを得意としています。しかし企業システムでは、一つひとつの機能だけでなく、システム全体をどのような構成にするかを考える必要があります。例えば、どのデータをどこで管理するのか、既存システムとどのように連携するのか、利用者が増えた場合にも対応できるのか、障害が発生した場合に業務を継続できるのかなどです。さらに、現在必要な機能だけではなく、数年後の事業や業務の変化も考慮しなければならない場合があります。開発時点では効率的に見える構成でも、機能追加を繰り返すことで改修が難しくなったり、特定のサービスへ依存しすぎて将来の変更が難しくなったりする可能性があります。AIから設計案を提示してもらうことはできますが、どの方法を採用するかは、予算、開発期間、セキュリティ、保守性、将来の拡張性など複数の条件を踏まえて判断する必要があります。そのため、生成AI時代においても、システム全体を見ながら技術を選択する設計力は重要です。
AIが生成した成果物をレビュー・検証する
生成AIの利用が増えるほど、人間によるレビューの重要性も高まります。AIが作成する成果物は、プログラムコードだけではありません。要件の整理結果、仕様書、設計案、テストケース、マニュアルなど、さまざまなものが生成AIによって作成されるようになります。それらが正しいかどうかを確認せずに次の工程へ進めてしまうと、最初の小さな誤りが後工程で大きな問題になる可能性があります。例えば、要件整理の段階でAIが重要な条件を見落としていた場合、その内容をもとに設計・開発・テストまで進めれば、完成後に大きな修正が必要になることも考えられます。そのため、AIが作成したものについて、
「元の要件と一致しているか」
「不足している条件はないか」
「セキュリティ上の問題はないか」
「既存機能へ影響しないか」
「実際の業務で利用できるか」
といった観点から確認する必要があります。生成AIによって「作る時間」が短縮されるほど、人間は「正しいものが作られているかを確認する力」を高める必要があるでしょう。
業務を理解したうえで最終判断を行う
システム開発では、必ずしも技術的に最も新しい方法が、その企業にとって最適とは限りません。例えばAIを使えば自動化できる業務であっても、利用頻度が低ければ、導入や運用に必要なコストの方が大きくなる場合があります。反対に、現在は人手で対応できていても、今後取引量が大幅に増える予定であれば、早い段階でシステム化しておく方がよい場合もあります。こうした判断には、システムの知識だけではなく、企業の業務、予算、人員、将来計画などを総合的に考える必要があります。生成AIは複数の選択肢を提示したり、それぞれのメリット・デメリットを整理したりすることはできます。
しかし、最終的にどの方法を採用するのかを決め、その結果に責任を持つのは人間です。これは、生成AIを利用して開発する場合も、生成AIそのものを業務システムへ組み込む場合も同じです。「AIで実現できるか」だけではなく、「その企業にとってAIを使うことが本当に適切なのか」まで考えることが重要になります。2026年のシステム開発では、生成AIによって人間の仕事が単純になくなるのではなく、役割の重点が変化していくと考えられます。コード生成や情報整理などAIが得意な作業はAIへ任せ、人間は業務理解、要件定義、設計、レビュー、最終判断といった領域により多くの時間を使う。こうした役割分担ができるかどうかが、生成AIをシステム開発で効果的に活用するうえで重要になっていくでしょう。
7.企業が生成AIをシステム開発に導入する方法
生成AIをシステム開発へ取り入れる際、最初から開発工程全体をAI化する必要はありません。
むしろ、いきなり大規模な導入を目指すと、「どの程度効果があったのか分からない」「現場によって使い方が異なる」「セキュリティ上のルールが追いつかない」といった問題が生じる可能性があります。まずは生成AIを活用しやすく、万が一問題があっても影響が限定される業務から始め、効果を確認しながら対象範囲を広げていく方法が現実的です。特に企業で利用する場合は、ツールの導入だけでなく、利用ルールやレビュー体制まで含めて考える必要があります。
まずは開発業務の補助から始める
生成AIを初めてシステム開発へ導入する場合は、エンジニアの判断を置き換えるのではなく、既存の作業を補助する用途から始めるとよいでしょう。例えば、仕様書や議事録のたたき台作成、既存コードの説明、テストケースの洗い出し、エラー内容の整理などです。これらはAIが作成した結果を人間が確認しやすく、誤りがあった場合にも比較的修正しやすい業務です。
一方で、AIが生成したコードを確認せずに本番環境へ反映したり、重要な設計判断をすべてAIへ任せたりする方法は、導入初期には特に慎重になる必要があります。
まずは、
「これまで30分かかっていた情報整理がどの程度短縮できたか」
「テストケースの洗い出しに役立ったか」
「エンジニアが調査に使う時間を減らせたか」
など、身近な業務から効果を確認していくことが大切です。
また、同じ生成AIでも、利用する人によって効果に差が出る場合があります。どのような情報を与えると適切な回答を得やすいのか、どのような業務には向いていないのかを実際に利用しながら確認することで、自社に合った活用方法が見えてきます。
小規模なPoCで効果を検証する
開発業務の補助として一定の効果を確認できたら、次は小規模なPoC(概念実証)を行う方法があります。PoCとは、新しい技術や仕組みについて、本格導入する前に「実際に利用できるのか」「期待する効果が得られるのか」を小さな範囲で検証する取り組みです。生成AIの場合も、最初から重要な基幹システム全体へ適用するのではなく、対象となる業務や機能を限定して検証することで、リスクを抑えながら効果を確認できます。
例えば、
「テストケース作成に生成AIを利用する」
「既存プログラムの調査に利用する」
「小規模な社内システムの開発を支援させる」
「仕様書の作成・更新を支援させる」
といったように、目的を限定して試す方法があります。
このとき重要なのが、導入前に評価する項目を決めておくことです。単に「便利だった」「使いやすかった」という感想だけでは、本格導入すべきか判断しにくくなります。作業時間がどの程度変化したのか、AIが生成した成果物にどの程度の修正が必要だったのか、レビュー時間は増減したのかなど、可能な範囲で具体的に確認するとよいでしょう。また、生成速度だけで評価しないことも重要です。AIによってコードを短時間で作成できても、その後の修正やレビューに多くの時間がかかっているのであれば、開発工程全体では十分な効果が出ていない可能性があります。PoCでは、AIを使った工程だけではなく、その前後を含めた開発プロセス全体で効果を見ることが大切です。
AI利用のルール・ガイドラインを整備する
生成AIを組織的に利用する場合は、利用ルールを整備しておく必要があります。個人利用であれば、それぞれが判断しながら使うこともできますが、企業のシステム開発では顧客情報やソースコード、システム構成などを扱うため、個人の判断だけに任せることは適切ではありません。
最低限、
「利用を認める生成AIサービス」
「AIへ入力してよい情報・入力してはいけない情報」
「顧客のソースコードを扱う場合のルール」
「AIが生成したコードのレビュー方法」
「生成物を利用するときの確認事項」
「AIエージェントへ与えてよい権限」
などを整理しておくとよいでしょう。
また、一度ガイドラインを作成して終わりではありません。生成AIは変化が速く、新しい機能やサービスが次々と登場します。これまで文章生成だけを想定していたルールでは、AIエージェントがファイルを編集したり、外部ツールを操作したりする利用方法に対応できないこともあります。利用しているAIサービスや社内での活用範囲に合わせて、定期的にルールを見直す必要があります。一方で、ルールを厳しくしすぎて、現場でほとんどAIを利用できない状態になってしまうことにも注意が必要です。「禁止するためのルール」ではなく、安全に利用できる範囲を明確にするためのルールとして整備することが重要です。
効果を測定しながら対象範囲を広げる
PoCで効果が確認できたら、生成AIを利用する工程や対象プロジェクトを段階的に広げていきます。例えば、最初はドキュメント作成だけに利用していた生成AIを、テストケース作成やコードレビューにも利用するといった進め方です。その際も、継続的に効果を確認することが重要です。生成AI導入の成果は、「AIを何回使ったか」「どれだけ多くのコードを生成したか」だけでは判断できません。
本来確認したいのは、
開発時間を短縮できたか、エンジニアの作業負担が減ったか、品質に問題がないか、手戻りが増えていないか、顧客へ提供する価値が向上したか、といった点です。
また、すべての工程で生成AIを利用する必要もありません。実際に使ってみた結果、人間が対応した方が早い作業や、AIを利用すると確認作業が増えてしまう業務が見つかることもあります。その場合は、無理にAIへ置き換える必要はありません。生成AI導入では、「AIを使う工程を増やすこと」そのものを目標にするのではなく、開発全体をより効率的かつ高品質にするために、AIを利用する工程を選ぶことが重要です。
8.生成AIを導入する前に整えておきたい開発環境
生成AIを導入しても、開発環境や情報管理が整っていなければ、その能力を十分に活かせない場合があります。例えば、最新の仕様書がどこにあるのか分からない、ソースコードの管理方法が統一されていない、テストの手順が担当者によって異なるといった状態では、AIに適切な情報を与えることが難しくなります。生成AIは、存在しない情報を自動的に補って企業独自の業務を理解してくれるわけではありません。そのためAI活用を進めることと同時に、これまで人間だけで行っていた開発プロセスや情報管理を整理することも重要になります。
ソースコード・仕様書・ドキュメントを整理する
生成AIを効果的に利用するためには、AIが参照する情報の質が重要です。例えば、現在のシステムと仕様書の内容が異なっている場合、古い仕様書をもとにAIへ質問すれば、現在のシステムとは異なる回答が返ってくる可能性があります。長年運用しているシステムでは、機能追加や改修が繰り返され、開発当初の設計書と現在のシステムに差が生じていることもあります。
また、
「仕様書はあるが更新されていない」
「変更内容が担当者のメールにしか残っていない」
「障害対応の記録が担当者ごとに管理されている」
といった状態では、必要な情報をAIへ与える以前に、人間自身が正しい情報を探すことも難しくなります。生成AIを活用するのであれば、ソースコード、仕様書、設計書、変更履歴、障害対応履歴などを整理し、どの情報が現在の状態を示しているのか分かるようにしておくことが大切です。これはAIのためだけではありません。情報を整理することで、新しい担当者への引継ぎや、将来的なシステム改修、保守会社の変更などにも対応しやすくなります。生成AI導入をきっかけに、自社のシステムに関する情報が適切に管理されているかを見直すことも有効です。
テスト・レビューの仕組みを整える
生成AIによってコードを作成するスピードが上がれば、それを確認する仕組みも重要になります。例えば、これまで一人のエンジニアが1日に確認していたコード量よりも多くのコードをAIが生成できるようになったとしても、レビューやテストが追いつかなければ、開発全体の速度は上がりません。むしろ、確認できないコードが増えることで、品質上のリスクが高まる可能性があります。そのため、AIによる開発を進める場合には、
「誰が生成されたコードを確認するのか」
「どのような観点でレビューするのか」
「どのテストを自動化するのか」
「どの段階で人間による承認を必要とするのか」
といった流れを整理しておく必要があります。特にAIエージェントにコードの変更まで任せる場合は、変更後に自動テストを実行する仕組みや、人間によるレビューを通過しなければ本番環境へ反映できない仕組みなどを組み合わせることが重要です。生成AIによって開発速度を高めるのであれば、それと同時に品質を確認する工程も強化することが求められます。
AIに渡してよい情報の範囲を決める
生成AIをシステム開発へ利用する場合、「何をAIへ入力するのか」を明確にしておく必要があります。システム開発で扱う情報には、公開されている技術情報だけでなく、顧客固有の業務情報や個人情報、ソースコード、データベース構造、サーバー情報などが含まれる場合があります。これらをすべて同じようにAIへ入力してよいわけではありません。例えば、一般的なプログラミング方法について質問する場合と、実際の顧客データを含むログを入力する場合では、情報漏えいが発生した際の影響が大きく異なります。
そのため、
「公開情報」
「社内情報」
「機密情報」
「個人情報」
など、情報の種類に応じて取り扱いを分ける方法があります。
また、利用する生成AIサービスについても、データがどのように保存・処理されるのか、入力内容がモデルの学習に利用されるのか、管理者が利用状況を把握できるのかなどを確認する必要があります。特に顧客から預かっている情報については、自社の社内ルールだけでなく、契約内容なども確認したうえで取り扱うことが重要です。「AIだから特別」というよりも、外部サービスへ重要な情報を渡す際に必要な情報管理を、生成AIについても行うという考え方が基本になります。
AIを活用しやすい開発プロセスをつくる
生成AIを導入する際には、AIツールを追加するだけではなく、開発プロセスそのものを見直すことも重要です。例えば、仕様が口頭だけで伝えられていたり、変更内容が記録されていなかったりする環境では、AIへ正確な指示を与えることが難しくなります。反対に、要件、仕様、ソースコード、テスト、変更履歴などが整理されていれば、AIに必要な情報を与えやすくなります。また、AIエージェントへまとまった作業を任せる場合には、「何を達成すれば完了なのか」を明確にすることも重要です。
例えば、
「この機能を修正してください」
だけではなく、
「この条件で発生するエラーを修正し、既存機能に影響がないことをテストで確認する」
といったように、目的や完了条件を明確にすることで、AIが作業を進めやすくなります。
これは、人間のエンジニアへ作業を依頼する場合にも共通する考え方です。生成AIを導入することで、これまで曖昧だった要件や開発ルール、レビュー方法を整理する必要性が見えてくることもあります。その意味では、生成AI導入は単なるツールの追加ではなく、自社のシステム開発プロセスそのものを見直すきっかけにもなります。AIを使いやすい環境を整えることは、人間にとっても開発しやすく、引継ぎや保守を行いやすい環境をつくることにつながります。
9.生成AIによってシステム開発会社の選び方は変わる?
生成AIがシステム開発の現場に普及すると、システム開発会社を選ぶ際にも「生成AIを活用しているか」という点が気になるかもしれません。実際、生成AIを適切に活用することで、コード作成やテスト、ドキュメント作成などを効率化できる可能性があります。しかし、「生成AIを使っている会社=開発力が高い会社」と単純に判断することはできません。生成AIはあくまでシステム開発を支援する手段です。重要なのは、AIを使っているかどうかだけではなく、顧客の業務を理解し、適切なシステムを設計したうえで、AIを活用できる工程と人間が判断すべき工程を分けられているかという点です。
「AIを使っているか」だけで判断しない
生成AIを利用すれば、コードやドキュメントの作成時間を短縮できる可能性があります。しかし、AIを導入していること自体がシステムの品質を保証するわけではありません。例えば、生成AIによって短期間で多くのコードを作成できても、内容を十分に確認せずに開発を進めれば、不具合やセキュリティ上の問題が残る可能性があります。反対に、生成AIを適切な工程へ取り入れ、人間によるレビューやテストを組み合わせていれば、作業効率を高めながら品質を確認することができます。
そのため、開発会社を検討する際には、
「どの工程でAIを利用しているのか」
「AIが生成した成果物をどのように確認しているのか」
「AIを利用する際のセキュリティルールはあるのか」
といった点を確認することも一つの方法です。
「AIを使っている」という言葉だけではなく、どのような目的で、どのように開発プロセスへ組み込んでいるのかを見ることが重要です。
AIと人間の役割分担を確認する
生成AIを活用したシステム開発では、AIと人間の役割分担も重要になります。例えば、コードのたたき台作成やテストケースの洗い出しはAIが支援し、要件定義や設計、レビュー、最終的な品質判断はエンジニアが担当するといった分担です。AIへ任せる範囲が広がるほど、「どの段階で人間が確認するのか」が重要になります。特に企業の基幹システムでは、障害が発生した場合に業務そのものが止まってしまう可能性があります。
そのため、
「AIが作成したコードを誰が確認するのか」
「テストはどのように行われるのか」
「問題が発生した場合は誰が責任を持って対応するのか」
といった開発体制も確認しておくとよいでしょう。
生成AIを活用していることよりも、AIを利用しても品質を維持できる開発体制になっているかが重要です。
業務理解・要件定義力がより重要になる
生成AIによってコードを作成しやすくなるほど、システム開発では「何を作るのか」を決める工程の重要性が高まります。プログラムを短時間で作成できても、そもそもの要件が間違っていれば、必要のないシステムを効率よく作ってしまうことになります。例えば、「現在Excelで行っている作業をそのままシステム化したい」という依頼があった場合でも、本当に現在の業務フローをそのまま再現することが最適とは限りません。業務を整理してみると、不要な入力作業が残っていたり、別のシステムから自動的に取得できる情報を手入力していたりする場合もあります。こうした課題を発見するには、企業ごとの業務内容を理解し、現場から必要な情報を引き出す力が必要です。生成AIはヒアリング項目の整理や要件書の作成を支援できますが、「何が本当の課題なのか」を考え、顧客と話し合いながら要件を決める工程まで完全に置き換えられるわけではありません。システム開発会社を選ぶ際には、AIや最新技術への対応だけではなく、業務内容を理解したうえで提案してもらえるかどうかも重要なポイントです。
開発後の保守・改善まで考えて選ぶ
システムは、完成してリリースすれば終わりではありません。運用を開始した後にも、不具合への対応、OSやミドルウェアなどの環境変化への対応、機能追加、業務変更に伴う改修などが必要になります。生成AIを利用して短期間でシステムを開発できたとしても、システムの構造を開発会社側が十分に把握していなければ、後から改修する際に問題が生じる可能性があります。特にAIが生成したコードが増えるほど、「なぜこの処理になっているのか」を人間側でも理解し、必要なドキュメントを残しておくことが重要です。開発会社を選ぶ際には、開発期間や費用だけでなく、開発後の保守体制があるか、仕様や変更内容が適切に管理されるか、将来的な機能追加に対応できるか、担当者が変わっても保守できる状態になっているかなども確認しておくとよいでしょう。生成AIによってシステムの「作り方」が変化しても、企業がシステムを長期間利用することに変わりはありません。だからこそ、開発時の効率だけではなく、運用・保守まで含めた長期的な視点で開発会社を選ぶことが大切です。
10.生成AI時代のシステム開発は今後どうなる?
2026年現在、生成AIはシステム開発のさまざまな工程へ入り始めています。今後もAIの性能向上や開発ツールとの連携が進めば、人間が直接行う作業とAIへ任せる作業の範囲は変化していくと考えられます。ただし、将来のシステム開発が「すべてAIによって自動化される」と決まっているわけではありません。生成AIの進化だけでなく、企業側のセキュリティ要件や品質管理、法務・契約上の条件なども、実際の活用範囲に影響します。ここでは、2026年時点で見えている変化をもとに、今後のシステム開発について考えていきます。
AIエージェントの活用範囲はさらに広がる
これまでの生成AI活用では、人間が質問を入力し、AIが回答やコードを生成するという使い方が中心でした。現在はそこから一歩進み、AIエージェントへまとまったタスクを任せる活用が広がっています。今後は、単純なコード生成だけでなく、既存システムの調査、機能追加、テスト、ドキュメント更新など、より多くの開発作業でAIエージェントが利用される可能性があります。
例えば、エンジニアが、
「この機能を追加し、既存機能に影響がないことを確認する」
という目的を与え、AIエージェントが関連するコードを調査し、変更を加え、テスト結果までまとめるといった活用です。
また、一つのAIがすべてを担当するだけでなく、設計、実装、レビュー、テストなど、それぞれ異なる役割を持つAIを組み合わせる方法も考えられます。一方で、AIへ任せる作業が増えるほど、アクセス権限や品質管理、人間による承認などの仕組みも重要になります。今後は「AIに何ができるか」だけでなく、どこまでAIへ任せ、どこから人間が確認するのかを設計することが開発プロセスの一部になっていくでしょう。
エンジニアに求められるスキルが変化する
生成AIによってコードを作成する作業が効率化されれば、エンジニアに求められる能力も変化していく可能性があります。もちろん、プログラミングやデータベース、ネットワークなどの技術的な知識が不要になるわけではありません。AIが生成したコードに問題がないか判断するためには、むしろ基礎となる技術を理解している必要があります。
そのうえで、今後は、
業務内容を理解する力、要件を整理する力、システム全体を設計する力、AIへ適切な条件を伝える力、AIが作成した成果物を評価する力などの重要性が高まると考えられます。
例えば、AIが複数の実装方法を提示した場合に、どの方法が現在のシステムに適しているのかを判断するには、技術だけでなく保守性や将来の拡張性まで考える必要があります。生成AIを利用できること自体が特別なスキルではなくなれば、AIを使って何を実現し、その結果を正しく評価できるかがより重要になるでしょう。
開発期間・コストの考え方も変わる
生成AIによって開発作業の一部が効率化されれば、システム開発に必要な期間やコストにも変化が生じる可能性があります。コード作成、テストケース作成、ドキュメント作成などに必要な時間を削減できれば、従来よりも短期間で開発できるケースも出てくるでしょう。一方で、「生成AIを使えばシステム開発費を大幅に削減できる」と一律に考えることはできません。システム開発では、プログラミング以外にも、ヒアリング、要件定義、設計、データ移行、テスト、教育、リリース、保守など多くの工程があります。特に企業ごとの業務に合わせたシステムでは、関係者との調整や業務ルールの整理に多くの時間が必要になる場合があります。また、AIが作成した成果物をレビューする時間や、AIを安全に利用するための環境整備にも一定のコストが必要です。そのため今後は、単純に「AIで何時間削減できたか」だけでなく、開発期間、品質、保守性、将来的な改修まで含めた総合的な費用対効果を見ることが重要になります。
「AIを使うこと」ではなく「AIで何を実現するか」が重要になる
生成AIが普及すると、「自社でもAIを導入しなければならない」と考えてしまうことがあります。しかし、AIを利用すること自体が企業の目的ではありません。システム開発で重要なのは、業務上の課題を解決することです。
例えば、
入力作業を減らしたい、情報を一元管理したい、受発注業務を効率化したい、問い合わせ対応を効率化したい、蓄積されたデータを活用したいといった目的があり、その実現手段の一つとしてAIがあります。
課題によっては、生成AIを利用するよりも、既存システムを改善したり、業務フローを見直したり、通常のシステム開発で自動化したりする方が適している場合もあります。反対に、大量の文章を扱う業務や、人間が情報を探して判断する作業などでは、生成AIを組み込むことでこれまで難しかった効率化を実現できる可能性があります。今後AIがさらに身近になるほど、「AIを導入していること」そのものでは差がつきにくくなります。重要なのは、自社の課題を整理したうえで、AIを使うべき部分と使わない部分を見極めることです。生成AIは目的ではなく手段であるという考え方を持つことが、AI時代のシステム開発ではこれまで以上に重要になるでしょう。
11.まとめ|2026年は生成AIを「開発支援」から「開発プロセス」に取り入れる時代へ

生成AIは、システム開発の進め方を大きく変えつつあります。これまでのようにコード生成や質問への回答に利用するだけでなく、要件整理、設計、プログラミング、テスト、コードレビュー、ドキュメント作成など、開発プロセスのさまざまな場面で活用できるようになっています。さらに2026年は、AIエージェントの進化によって、人間が一つひとつ指示を出すだけではなく、ある程度まとまった開発タスクをAIへ任せるという使い方も現実的になってきました。一方で、生成AIがシステム開発のすべてを代替できるわけではありません。業務課題の整理や要件定義、システム全体の設計、セキュリティへの配慮、AIが生成した成果物のレビュー、最終的な品質判断など、人間が担うべき役割は引き続き存在します。
むしろAIによって「作る作業」が効率化されるほど、
何を作るのか
なぜ作るのか
作られたものが正しいのか
を判断する力が重要になっていくでしょう。
企業が生成AIをシステム開発へ取り入れる際も、最初からすべての工程をAI化する必要はありません。まずは情報整理やドキュメント作成、テストなどの補助的な業務から始め、小規模なPoCで効果を確認しながら、利用ルールやレビュー体制を整備していく方法があります。また、AIを活用しやすくするためには、仕様書やソースコード、変更履歴などの情報を整理し、開発プロセスそのものを見直すことも重要です。生成AIを導入することを目的にするのではなく、「自社の業務やシステム開発において、どこへAIを取り入れると価値が生まれるのか」を考えることが、これからのAI活用では重要になります。
エイ・エヌ・エスでは、生成AIを含む新しい技術を活用しながら、企業ごとの業務や課題に合わせたシステム開発を行っています。「生成AIをシステム開発にどう活用すればよいか分からない」「AIを活用できるシステム基盤を整えたい」「既存の業務システムを見直したい」といった場合は、現在の業務やシステムの状況を整理するところからご相談いただけます。
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