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レガシーシステムはなぜなくならない?使い続けるリスクを解説

レガシーシステムはなぜなくならない?使い続けるリスクを解説

公開日:2025年6月25日 更新日:2026年8月17日

 

企業で長年利用されているシステムの中には、「古くなっていることは分かっているものの、現在も問題なく動いているため、そのまま使い続けている」というものも少なくありません。特に販売管理や在庫管理、生産管理、会計など、日々の業務を支える基幹システムは簡単に停止できないため、刷新の必要性を感じながらも具体的な対応に踏み切れないケースがあります。

しかし、長く使っているシステムが問題なのではありません。注意したいのは、OSやソフトウェアのサポート終了、システムを理解する担当者の退職、設計書・仕様書の不足、改修の難しさなどによって、「今後も安全かつ安定して使い続けられるか分からない状態」になっていることです。

 

こうした状態にあるシステムは、一般的に「レガシーシステム」と呼ばれます。

レガシーシステムの難しいところは、問題が目に見えにくいことです。日常業務で正常に動いていれば、システム刷新の優先順位はどうしても低くなりがちです。一方で、障害が発生してから調査しようとしても、対応できる技術者がいない、交換するハードウェアが入手できない、仕様を把握するための資料が残っていないなど、すぐに復旧できない可能性があります。

また、レガシーシステムの問題は、障害やセキュリティだけではありません。新しいシステムとのデータ連携が難しい、業務変更に合わせた改修に時間がかかる、AIやクラウドなどの新しい技術を活用しにくいといった状況になれば、企業が進めたい業務改善やDXの妨げになることも考えられます。

そのため重要なのは、「システムが古いからすぐに入れ替える」と判断することではなく、現在のシステムがどのような状態にあり、使い続けることでどのようなリスクがあるのかを把握することです。そのうえで、現行システムを維持するのか、部分的に改修するのか、段階的に移行するのか、システム全体を再構築するのかを検討する必要があります。

 

本コラムでは、レガシーシステムとは何かという基本から、レガシーシステムがなくならない理由、使い続けるリスク、維持にかかる見えにくいコスト、脱却方法、システム再構築の進め方まで詳しく解説します。

自社のシステムがレガシー化しているか確認できるチェック項目についても紹介しますので、「長年利用しているシステムをこのまま使い続けてもよいのか」「そろそろ再構築を検討するべきなのか」とお悩みの方は、システムの現状を整理する際の参考にしてください。

 

 

目次

1.レガシーシステムとは?
– 古いシステムがすべてレガシーシステムとは限らない
– レガシー化したシステムに見られる特徴
– ブラックボックス化との違いと関係性

2.レガシーシステムがなくならない理由
– 業務に深く組み込まれ、簡単に停止できない
– 移行にかかる費用・期間・人員の負担が大きい
– ブラックボックス化や技術者不足で刷新が難しい
– 「今は動いている」ため優先順位が上がりにくい

3.自社のシステムはレガシー化している?確認したいポイント
– OSやソフトウェア、ハードウェアの状況を確認する
– 設計書・仕様書・ソースコードが管理されているか
– システムを理解している担当者がいるか
– 改修・連携・障害対応に問題がないか

4.レガシーシステムを使い続けるリスクとは?
– セキュリティリスクが高まる
– システム障害によって業務が停止する可能性がある
– DXやデータ活用、新しい技術導入の障壁になる
– 運用・保守コストと属人化のリスクが増加する

5.「今動いているから大丈夫」とは限らない理由
– 問題が表面化するまでリスクに気付きにくい
– 障害発生後では選択できる対応方法が限られる
– 製品のサポート終了や部品調達が影響する
– 担当者の退職によって突然維持が難しくなることもある

6.レガシーシステムを維持し続ける「見えにくいコスト」
– 保守費用だけでは分からない維持コスト
– 改修や障害対応に時間と費用がかかる
– 手作業や二重入力など業務側にもコストが発生する
– 「刷新しないこと」による機会損失も考える

7.レガシーシステムから脱却する主な方法
– 現行システムを維持しながら必要な部分を改修する
– 既存資産を活用して実行環境を移行する
– パッケージ・クラウドサービスへの移行を検討する
– 現在の業務に合わせてシステムを再構築する

8.レガシーシステム再構築の進め方
– 現行システムと業務内容を調査・可視化する
– 必要な機能と不要な機能を整理する
– 新システムの要件とデータ移行方針を決める
– 開発・テスト・移行を経て本番稼働へ進める

9.ブラックボックス化したシステムを再構築するには?
– まずは現行システムの調査・解析から始める
– ドキュメントが不足している場合は情報を集め直す
– システムだけでなく実際の業務も確認する
– 現行システムをそのまま再現することを目的にしない

10.レガシーシステム再構築で失敗しないためのポイント
– 現行機能をすべてそのまま移行しようとしない
– システムだけでなく業務そのものを見直す
– データ移行を早い段階から検討する
– 稼働後の保守・運用まで考えて設計する

11.レガシーシステムを見直すタイミング
– OSや製品のサポート終了が近づいている
– 保守できる担当者やベンダーが限られている
– 改修費用や対応期間が増えている
– 事業変化やDX・AI・クラウド活用へ対応できない

12.レガシーシステム問題とDXを考える
– レガシーシステムがDXの足かせになる理由
– システム刷新そのものをDXの目的にしない
– 「2025年の崖」が提起した課題を現在の視点で考える

13.レガシーシステムにはシステム再構築をご検討ください

 

 

 

 

 

1.レガシーシステムとは?

レガシーシステムとは、企業や組織で長期間利用されているシステムのうち、技術の老朽化や複雑化、保守できる人材の不足などによって、維持・改修が難しくなっているシステムを指します。

販売管理、生産管理、在庫管理、顧客管理などの基幹システムは、一度導入すると長期間利用されることも珍しくありません。導入後も業務の変化に合わせて機能追加や改修を繰り返すため、当初はシンプルだったシステムが、年月の経過とともに複雑になっていくこともあります。

ただし、長期間利用しているからといって、必ずしもレガシーシステムになるわけではありません。重要なのはシステムの「年齢」ではなく、現在そして将来にわたって、安全かつ安定して維持・改修していける状態にあるかという点です。

 

古いシステムがすべてレガシーシステムとは限らない

「レガシーシステム」という言葉から、10年、20年前に作られた古いシステムをイメージする方も多いでしょう。しかし、古いシステムであっても、適切な保守が行われ、必要なドキュメントが整備され、セキュリティ更新などにも対応できているのであれば、直ちに問題があるとは限りません。反対に、比較的新しいシステムであっても、開発を担当した会社や担当者しか仕様を把握しておらず、設計書や仕様書も残っていない場合には、将来的な保守や改修が難しくなる可能性があります。つまり、システムがレガシー化しているかを判断する際は、導入した時期だけではなく、

 

・現在も保守できる環境があるか
・使用している技術のサポートが続いているか
・システムの仕様を把握できる資料があるか
・対応できる技術者がいるか
・業務変更に合わせて改修できるか
・他のシステムやサービスと連携できるか

 

といった複数の視点から確認することが大切です。

「古いから入れ替える」のではなく、使い続けるうえでどのような問題があるのかを確認することが、レガシーシステム対策の第一歩といえるでしょう。

 

レガシー化したシステムに見られる特徴

レガシー化したシステムには、いくつか共通して見られる特徴があります。代表的なのが、使用しているOSやミドルウェア、データベースなどが古くなり、メーカーやベンダーによるサポートを受けにくくなっている状態です。サポートが終了すると、問題が発生した際に公式な支援を受けられなくなったり、セキュリティ更新が提供されなくなったりする場合があります。また、長年にわたって機能追加や改修を繰り返した結果、システム構成そのものが複雑になっているケースもあります。例えば、一つの機能を修正したところ、想定していなかった別の機能に影響が出るような状態です。機能同士の関係を把握しにくくなるほど、改修前の影響調査や改修後のテストに多くの時間が必要になります。

 

さらに、古いシステムでは開発当時の担当者が異動・退職していることもあります。設計書や仕様書などが十分に残されていなければ、「なぜこの処理になっているのか」「変更するとどこに影響するのか」が分からず、担当者の経験や記憶に依存した状態になりかねません。

そのほか、新しいクラウドサービスや外部システムとの連携が難しい、データを取り出しにくい、特定の端末や環境でなければ利用できないといった問題が発生することもあります。こうした問題が積み重なることで、システムを維持すること自体が企業の負担となっていきます。

 

ブラックボックス化との違いと関係性

レガシーシステムを考えるうえで、もう一つ理解しておきたいのが「ブラックボックス化」です。ブラックボックス化とは、システムの内部構造や仕様、処理内容などを十分に把握できなくなっている状態を指します。

例えば、

・設計書や仕様書が残っていない
・ソースコードはあるものの内容を理解できる人がいない
・開発会社との契約が終了している
・改修履歴が整理されていない
・特定の担当者しか操作方法や仕様を知らない

 

といった状況です。

レガシー化とブラックボックス化は同じ意味ではありませんが、両者が同時に進行することはあります。システムが古くなるにつれて開発当時の担当者が減り、さらに改修を繰り返すことで当初の設計書と現在の仕様が一致しなくなる。その結果、システム全体を把握できる人がいなくなる、という流れです。ブラックボックス化すると、簡単な機能改修であっても、まず現状を調査するところから始めなければならない場合があります。障害が発生した際にも原因の特定に時間がかかり、復旧までの時間が長くなる可能性があります。

そのため、レガシーシステムへの対応では、使用している技術の古さだけを見るのではなく、「現在のシステムについて、社内または保守会社がどこまで説明できる状態にあるか」についても確認することが重要です。

 

2.レガシーシステムがなくならない理由

 

レガシーシステムにさまざまな課題があることを理解していても、すぐに新しいシステムへ入れ替えられるとは限りません。むしろ、長期間利用されているシステムほど企業の重要な業務と密接に結びついているため、「古いから新しくする」という単純な判断が難しくなります。

ここでは、レガシーシステムが企業に残り続ける主な理由を整理します。

 

業務に深く組み込まれ、簡単に停止できない

レガシーシステムがなくならない大きな理由の一つが、企業の日常業務に深く組み込まれていることです。特に基幹システムの場合、販売管理、受発注、在庫管理、生産管理、請求管理など、企業活動に欠かせない業務を担っていることがあります。システムを停止すれば受注処理ができない、商品を出荷できない、請求書を発行できないといった状況になれば、「古くなったから」という理由だけで簡単に入れ替えることはできません。

さらに、長期間利用しているシステムには、その企業独自の業務ルールが反映されていることがあります。市販のパッケージシステムへ置き換えようとしても、現在の業務をそのまま再現できず、大幅な業務変更が必要になるケースも考えられます。システムを変更することが、そのまま業務の変更につながるため、現場への影響を考慮して刷新が先送りされることがあります。

 

移行にかかる費用・期間・人員の負担が大きい

レガシーシステムを新しいシステムへ移行するためには、単に新しいソフトウェアを導入するだけでは済まない場合があります。現在の業務を調査し、必要な機能を整理したうえで、新しいシステムの設計・開発を行います。さらに、既存システムに保存されているデータを新しいシステムへ移行し、正しく動作するかテストする必要もあります。その間、通常業務を続けながら新システムの検討に参加する社員も必要です。そのため、システム刷新には開発会社へ支払う費用だけではなく、社内担当者の時間や業務負担も発生することを考慮しなければなりません。

また、長年蓄積されたデータの形式が統一されていなかったり、現在使用していないデータが大量に残っていたりすると、データ移行にも時間がかかります。こうした費用や負担の大きさから、「もう少し現在のシステムを使おう」という判断が繰り返され、結果として刷新時期が先延ばしになるケースがあります。

 

ブラックボックス化や技術者不足で刷新が難しい

システムを新しくするためには、まず現在のシステムがどのような仕組みで動いているのかを把握する必要があります。

ところが、長期間利用しているシステムでは、

 

・開発した会社がすでに存在しない
・開発当時の担当者が退職している
・設計書や仕様書が残っていない
・長年の改修によって現在の仕様と設計書が一致しない

 

といった問題が起きることがあります。

新しいシステムを作ろうとしても、現在どのような機能があり、どの業務で使用されているのか分からなければ、移行対象を正確に整理できません。さらに、古いプログラミング言語や開発環境を使用している場合、その技術に対応できるエンジニアが限られることもあります。

「古いから刷新したいが、古すぎて現状を把握すること自体が難しい」という状況になり、結果として既存システムを使い続けざるを得なくなることがあります。

 

「今は動いている」ため優先順位が上がりにくい

レガシーシステムの刷新が後回しになる理由として見逃せないのが、現在のシステムが正常に稼働していることです。企業には、売上拡大、人材採用、新規事業、設備投資など、さまざまな投資先があります。その中で、現在問題なく利用できているシステムを入れ替えるために多額の費用を投じることは、経営上の優先順位をつけにくい場合があります。新しいシステムを導入して売上が増えるのであれば投資効果を説明しやすい一方、レガシーシステム対策は「将来起こるかもしれない問題を防ぐ」という側面もあるため、効果を数字で示しにくいことがあります。

しかし、障害やサポート終了、担当者の退職などは、必ずしも企業側が望むタイミングで発生するわけではありません。問題が起きてから対応を始めると、十分な検討期間を確保できず、本来であれば選択できたはずの移行方法が選べなくなる可能性もあります。そのため、すぐにシステムを刷新しない場合であっても、現在どのようなリスクがあり、どのような状態になったら具体的な対応を開始するのかを整理しておくことが重要です。

 

 

3.自社のシステムはレガシー化している?確認したいポイント

「自社のシステムがレガシーシステムなのか分からない」という場合、導入年数だけで判断する必要はありません。まずは、システムを今後も維持できる状態にあるかという観点から確認してみましょう。ここでは、技術、資料、人材、業務への対応という4つの視点から、確認しておきたいポイントを紹介します。

 

OSやソフトウェア、ハードウェアの状況を確認する

最初に確認したいのが、システムを構成している技術や製品の状況です。業務システムは、アプリケーションだけで動いているわけではありません。OS、データベース、ミドルウェア、サーバー、ネットワーク機器など、さまざまな要素によって構成されています。そのため、システム本体に問題がなくても、周辺の製品がサポート終了を迎えることで維持が難しくなる場合があります。

例えば、

 

・利用しているOSのサポート期間
・データベースやミドルウェアのバージョン
・サーバーなどのハードウェアの保守期限
・利用している開発言語やフレームワーク
・現在もセキュリティ更新を受けられるか

 

などを確認してみましょう。

すべてを社内で調べることが難しい場合には、現在の保守会社やシステム開発会社へ確認する方法もあります。重要なのは、「今動いているか」だけではなく、数年先まで維持できる見通しが立っているかを確認することです。

 

設計書・仕様書・ソースコードが管理されているか

次に確認したいのが、システムに関する資料です。

設計書や仕様書が残っていれば、システムの構成や処理内容を把握する手掛かりになります。また、ソースコードやデータベースの定義情報、過去の改修履歴なども、将来の保守や再構築を検討する際の重要な情報です。

一方で、

「設計書がどこにあるか分からない」
「資料はあるが、現在のシステムと内容が違う」
「ソースコードを誰が管理しているか分からない」

といった状態であれば注意が必要です。

資料が存在するだけで安心するのではなく、現在稼働しているシステムの状態と資料の内容が一致しているかについても確認しておきましょう。

 

また、システム再構築を検討する場合、こうした資料が十分に残っていないからといって、必ずしも再構築できないわけではありません。実際の画面やプログラム、データベース、利用状況などを調査し、現在の仕様を整理していく方法もあります。ただし、調査に必要な期間や工数が増える可能性があるため、資料の有無は早めに確認しておくことをおすすめします。

 

システムを理解している担当者がいるか

システムを支えている「人」についても確認が必要です。特に注意したいのが、特定の担当者しかシステムについて分からない状態です。

例えば、

「障害が発生すると必ずAさんが対応している」
「この処理については開発当時からいるBさんしか分からない」
「外部の保守会社の担当者一人に任せている」

といった状況です。

現在は問題なく運用できていても、その担当者が異動・退職したり、保守会社との契約が終了したりすれば、一気にシステムの維持が難しくなる可能性があります。特定の担当者に知識が集中している場合には、資料を整備したり、複数名で情報を共有したりするなど、属人化を解消する取り組みも必要です。

「現在対応できる人がいるか」だけではなく、その人がいなくなっても対応できる体制になっているかという視点で確認するとよいでしょう。

 

改修・連携・障害対応に問題がないか

最後に、日常的なシステム変更や障害対応について振り返ってみましょう。レガシー化は、実際の業務の中に兆候が現れていることがあります。

例えば、

 

・小さな機能変更でも長期間かかる
・改修するたびに別の機能で不具合が発生する
・新しいサービスと連携したくても対応できない
・必要なデータを簡単に取り出せない
・障害原因の調査に時間がかかる
・改修できる会社や技術者が限られている
・事業や業務の変化にシステムが追いついていない

 

といった状況です。

一つ該当したからといって、直ちにシステム全体を再構築する必要があるとは限りません。

しかし、複数の問題が重なっている場合には、「まだ使えるか」だけではなく、「今後も事業を支えるシステムとして使い続けられるか」という観点から見直す必要があります。

特に基幹システムは、問題が発生してから短期間で入れ替えることが難しいため、余裕がある段階から現状を把握しておくことが重要です。

そこで、自社の状況を整理するために、以下のような項目を一度確認してみるとよいでしょう。

チェック表を活用する際には、「いくつ当てはまったか」ではなく、「自社にとって影響の大きいリスクはどこにあるか」を確認することが大切です。

次章では、こうしたレガシーシステムを使い続けた場合に考えられる、セキュリティ、障害、DX、コストなどの具体的なリスクについて解説します。

 

 

4.レガシーシステムを放置することで生じるリスク

レガシーシステムは、現在問題なく稼働しているからといって、今後も同じ状態で使い続けられるとは限りません。

システムの老朽化が進むと、セキュリティや障害対応だけでなく、保守費用の増加や業務改善の停滞など、さまざまな問題につながる可能性があります。

特に基幹システムは、販売管理や受発注管理、在庫管理、生産管理、会計管理など、企業活動の中心となる業務を支えているケースが少なくありません。そのため、システムそのものの問題が経営上のリスクにつながることも考えられます。

ここでは、レガシーシステムを使い続けることで想定される代表的なリスクを解説します。

 

セキュリティリスクが高まる

レガシーシステムを使い続ける際に注意したいのが、セキュリティ上のリスクです。

OSやミドルウェア、データベースなどには、それぞれサポート期間が設けられていることがあります。サポートが終了すると、原則としてセキュリティ上の問題が発見されても修正プログラムが提供されなくなるため、既知の脆弱性を抱えた状態で利用し続けることになりかねません。

また、注意すべきなのはOSだけではありません。

システムを構成するサーバー、データベース、Webサーバー、フレームワーク、ライブラリなどの中に古いものが残っていれば、それがシステム全体のリスクとなる可能性があります。

長年利用しているシステムについては、「今動いているか」だけではなく、「現在も安全に維持できる環境なのか」という観点から確認することが重要です。

 

障害発生時に復旧まで時間がかかる

システムが古くなるほど、障害発生時の対応が難しくなる場合があります。

例えば、使用しているハードウェアがすでに製造終了となっていた場合、故障した部品をすぐに調達できないかもしれません。また、古いOSやプログラミング言語に対応できる技術者が少なくなっていれば、原因を特定できる人材を探すところから始めなければならないケースもあります。

さらに、

 

・設計書が残っていない
・仕様書と現在のシステムが一致していない
・過去の改修履歴が分からない
・ソースコードの管理状況が不明
・システムを理解していた担当者が退職している

 

といった状況が重なると、障害の原因を特定するまでにも時間がかかります。

特に基幹システムの場合、停止時間が長くなれば、受注、出荷、請求、生産などの業務に影響する可能性があります。

「故障してから考える」のではなく、正常に稼働しているうちに、障害発生時の連絡先や復旧方法、バックアップの状態などを確認しておくことが大切です。

 

維持・保守にかかるコストが増加する

古いシステムを使い続けることは、一見すると「新しいシステムを導入しないため費用を抑えられる」ようにも見えます。

しかし、中長期的には必ずしもそうとは限りません。

古い技術に対応できるエンジニアが減少すれば、保守できる会社や人材が限定される可能性があります。また、小さな機能改修であっても、既存システムへの影響を調査するために多くの工数が必要になることもあります。

さらに、システム上で対応できない業務をExcelや手作業で補っている場合、それらにかかっている人件費も広い意味ではシステムを維持するためのコストと考えることができます。

レガシーシステムのコストを評価するときは、年間の保守料金だけを見るのではなく、

 

・障害対応にかかる費用
・追加改修にかかる費用
・周辺業務で発生している手作業
・二重入力や転記にかかる時間
・古い環境を維持するための費用

 

なども含めて確認することが重要です。

 

DXや業務改善を進めにくくなる

レガシーシステムが問題となる理由は、単に「古いから」ではありません。企業が新しい取り組みを進めようとしたときに、既存システムが制約となる可能性があることも大きな問題です。

例えば、

 

「受注データを他のシステムと自動連携したい」

「営業部門からリアルタイムで在庫を確認したい」

「蓄積しているデータを分析に活用したい」

「AIを活用して業務を効率化したい」

 

といった要望が出ても、既存システムの構造によっては簡単に実現できない場合があります。その結果、新しいサービスやツールを導入するたびにCSVでデータを受け渡したり、担当者が手作業で転記したりする状況が生まれます。DXを進めるうえでは、最新技術を導入することだけでなく、新しい取り組みに対応できるIT基盤を整えておくことも重要です。レガシーシステムの状態を把握することは、その第一歩といえるでしょう。

 

5.レガシーシステムから脱却する主な方法

レガシーシステムに課題があるからといって、すべての企業が直ちに既存システムを廃棄し、ゼロから新しいシステムを開発する必要があるわけではありません。

現在のシステムをどこまで活用できるのか、どの部分に問題があるのかによって、適した対応方法は異なります。

重要なのは、「古いから全部入れ替える」と判断するのではなく、現状を調査したうえで適切な方法を選択することです。

 

現行システムを調査・可視化する

最初に行いたいのが、現在利用しているシステムの把握です。特に長期間使用しているシステムでは、当初の設計書と現在の仕様が異なっている場合があります。長年にわたって、

「この帳票項目を追加してほしい」

「この計算方法を変更したい」

「新しい取引先とのデータ連携に対応してほしい」

といった改修を繰り返していれば、導入当初とはシステムの構造が大きく変化していることも考えられます。

そのため、設計書を確認するだけではなく、実際のプログラムやデータベース、サーバー環境、外部システムとの連携などを調査し、「現在どのような仕組みで動いているのか」を把握することが重要です。

ドキュメントが十分に残っていない場合でも、ソースコードやデータベース、実際の動作などから調査できる場合があります。

 

リプレース・再構築を検討する

既存システムの老朽化が進んでいる場合には、新しいシステムへのリプレースや再構築が選択肢になります。ただし、ここで注意したいのが、既存システムをそのまま新しい技術で再現することを目的にしないことです。長年使われてきたシステムには、現在では不要になった機能や帳票が残っていることがあります。反対に、システムでは対応できないために、利用者がExcelや紙などを使って補っている業務が存在するかもしれません。

再構築を行うのであれば、

 

・現在も必要な機能は何か
・使用していない機能はないか
・手作業になっている業務はないか
・他システムと連携すべきデータは何か
・今後どのような業務改善を行いたいか

 

といった点まで整理するとよいでしょう。

既存システムを単純に新しくするのではなく、現在の業務に合わせてシステムそのものを見直すことで、再構築を業務改善の機会として活用できます。

 

段階的に刷新する

大規模な基幹システムでは、すべてを一度に入れ替えることが難しい場合もあります。システムの利用範囲が広ければ、移行対象となるデータも多くなります。また、複数部署の業務が一つのシステムにつながっている場合、一部を変更しただけでも別の業務へ影響する可能性があります。

そのような場合には、優先順位をつけて段階的に刷新していく方法も考えられます。

例えば、サポート終了が迫っている環境や、業務への影響が大きい機能などから優先的に対応し、その後ほかの領域へ対象を広げていきます。

一度にすべてを変更する場合と比較して、プロジェクトのリスクや現場への負担を分散できる可能性があります。

一方で、新旧システムを一定期間併用することになるため、データ連携や二重管理などについて事前に設計しておく必要があります。

 

現行システムを維持しながら刷新に備える

予算や社内体制などの事情から、すぐに再構築へ進めない企業もあるでしょう。その場合でも、何もしないまま利用し続けるのではなく、将来の刷新に備えて準備を始めることはできます。例えば、システム構成の整理、ドキュメントの整備、ソースコードの保管状況の確認、改修履歴の整理などです。同時に、障害が発生した場合の対応方法やバックアップ・復旧手順についても確認しておきます。こうした情報を整理しておけば、実際に再構築を行う際の現状調査を進めやすくなります。

「今すぐ刷新するか、何もしないか」の二択ではありません。

現行システムを安全に維持しながら、将来の移行に必要な情報を少しずつ整備することも、レガシーシステム対策の一つです。

 

 

6.レガシーシステム刷新を成功させるための進め方

レガシーシステムの刷新は、単なるシステム開発プロジェクトではありません。特に長年利用されてきた基幹システムの場合、そこには企業独自の業務ルールやノウハウが蓄積されています。そのため、「古いシステムを新しいシステムへ置き換える」ことだけを目的にすると、必要な業務要件が抜けたり、反対に不要な仕組みまで引き継いでしまったりする可能性があります。システムだけを見るのではなく、業務とシステムをセットで整理しながら進めることが重要です。

 

現行業務とシステムの関係を整理する

まず、「どの業務で、どの機能が使われているのか」を確認します。

例えば販売管理システムであれば、

受注 → 在庫確認 → 出荷 → 売上計上 → 請求

といった一連の業務の中で、どの処理をシステムが担い、どの部分を人が行っているのかを整理します。

 

このとき、システム内の機能だけを確認するのではなく、Excel、紙、メールなどを使った周辺業務まで確認することがポイントです。長年利用しているシステムでは、現場側が独自の工夫によってシステムの不足部分を補っていることがあります。こうした「システムの外側にある業務」まで把握することで、再構築後に必要となる機能を検討しやすくなります。

 

残すもの・変えるもの・なくすものを分ける

現行システムの機能をすべて新システムへ移す必要があるとは限りません。長期間利用されてきたシステムには、現在ではほとんど利用されていない機能や、過去の業務ルールに合わせて作られた処理が残っていることがあります。そこで、現在の業務を確認しながら、

 

 

 

 

というように整理してみると、必要な開発範囲を検討しやすくなります。「せっかく作った機能だから」という理由だけで残すのではなく、現在の業務や将来の事業計画を基準に判断することが大切です。

 

データ移行を早い段階から検討する

レガシーシステム刷新で特に注意したいのが、データ移行です。新しいシステムを開発できても、これまで蓄積してきたデータを適切に移行できなければ、業務を切り替えることができません。

長年利用しているシステムほど、

 

・重複データが存在する
・入力ルールが時期によって異なる
・現在では使用していないコードが残っている
・必須項目が入力されていない
・文字コードやデータ形式が古い

 

といった問題が見つかることがあります。

どのデータを新システムへ移すのか、過去何年分を移行するのか、不要なデータをどう扱うのかなどを早い段階から検討しておきましょう。

システム完成直前になって初めてデータの状態を確認すると、想定以上の整理・変換作業が必要となり、スケジュールに影響する可能性があります。

 

現場と開発側で認識を合わせながら進める

レガシーシステムの刷新では、情報システム部門や経営層だけでなく、実際にシステムを利用している現場の意見も重要です。

仕様書には書かれていなくても、

「この画面を毎朝確認している」

「この帳票を取引先への報告に使っている」

「この項目をExcelへ出力して別の集計に利用している」

など、現場で初めて分かる使い方があります。

こうした利用実態を把握しないまま新しいシステムを構築すると、リリース後に「以前できていたことができない」と判明することがあります。

 

一方で、現行システムの使い方をすべてそのまま踏襲すると、せっかく刷新しても業務そのものは変わりません。そのため、現場の意見を聞きながらも、「現在こうしているから残す」のではなく、「なぜこの業務が必要なのか」まで確認することが重要です。レガシーシステム刷新は、過去のシステムを再現するためのプロジェクトではありません。これまで蓄積してきた業務上の強みは残しながら、不要になった仕組みを整理し、今後の事業や業務に対応できるシステムへ再構築する機会として捉えるとよいでしょう。

 

 

7.「2025年の崖」とレガシーシステム問題の関係

レガシーシステムについて調べると、「2025年の崖」という言葉を目にすることがあります。「2025年の崖」は、経済産業省が2018年に公表した「DXレポート」の中で示した問題意識として広く知られるようになった言葉です。DXレポートでは、複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムを抱えたままでは、企業がデータを十分に活用できず、DXを実現することが難しくなると指摘されました。ここで重要なのは、「2025年」という年そのものを期限として捉えるのではなく、レガシーシステムを放置することで生じる経営上・IT上の課題に目を向けることです。2025年を過ぎた現在においても、既存システムの老朽化やブラックボックス化、IT人材不足といった課題が解消されていない企業では、引き続き対策を検討する必要があります。

 

 

「2025年の崖」が示した問題とは

経済産業省のDXレポートでは、既存システムの問題として、老朽化だけではなく、複雑化やブラックボックス化などが取り上げられています。長年にわたって改修を重ねた基幹システムでは、現在の業務に合わせてさまざまな機能が追加されている一方、システム全体の構造を把握することが難しくなっている場合があります。さらに、事業部門ごとに個別最適化されたシステムが存在すると、データを全社横断で活用しにくくなることもあります。つまり、レガシーシステム問題は「古いシステムを使っている」という技術上の問題だけではありません。既存システムが企業の変化を妨げ、新しいビジネスや業務改善を進めにくくしてしまうことが、本質的な課題の一つといえます。

 

2025年を過ぎてもレガシーシステム対策は必要

「2025年の崖」という言葉だけを見ると、「2025年を過ぎたので、すでに関係のない問題なのではないか」と感じるかもしれません。しかし、レガシーシステムのリスクが特定の年を境に突然なくなるわけではありません。

例えば、

 

・サポートが終了したOSやミドルウェアを使用している
・システムを理解している担当者が少なくなっている
・設計書と現在のシステムに差異がある
・外部サービスとのデータ連携が難しい
・改修のたびに大規模な影響調査が必要になる

 

といった問題を抱えているのであれば、現在も対策を検討する必要があります。むしろ、時間が経過するほど担当者の退職や技術者不足、ハードウェア・ソフトウェアのサポート終了などによって、移行の難易度が高くなる可能性もあります。重要なのは「2025年に間に合ったかどうか」ではなく、自社のシステムが現在どのような状態にあり、今後も安全かつ柔軟に利用できるのかを確認することです。

 

レガシーシステム対策をDXの土台づくりとして考える

DXを進めるために、すべてのレガシーシステムを新しいシステムへ置き換えなければならないわけではありません。現在のシステムが安定して稼働しており、必要なセキュリティ対策や保守体制が確保され、今後必要となるデータ連携や機能拡張にも対応できるのであれば、継続利用が合理的な場合もあります。

一方、既存システムの制約によって、

 

「データを活用したいが取り出せない」

「クラウドサービスと連携できない」

「業務を変更したくてもシステムを変更できない」

 

といった状況になっているのであれば、システムの見直しを検討するタイミングかもしれません。DXにおいて大切なのは、新しい技術を導入すること自体ではなく、デジタル技術やデータを活用して業務や事業をより良く変えていくことです。レガシーシステム対策についても、単なる「古いITの入れ替え」と捉えるのではなく、今後の業務改善やデータ活用を支える基盤を整える取り組みとして考えることが重要です。

 

 

8.レガシーシステム対策はどこから始めるべきか

レガシーシステムに不安を感じていても、「何から手を付ければよいのか分からない」という企業は少なくありません。特に基幹システムの場合、長年の改修によって多くの業務が結び付いているため、「すべてを調べてからでなければ相談できない」と考えてしまうこともあるでしょう。

しかし、最初から完璧な資料を準備する必要はありません。まずは分かる範囲で現在の状況を整理し、どこに大きなリスクがあるのかを把握することから始めます。

 

現在のシステム環境を棚卸しする

最初に確認したいのが、「現在何を使っているのか」です。

例えば、

 

・システムの名称と用途
・導入した時期
・利用している部署と人数
・サーバーの設置場所
・OSやデータベース
・利用しているプログラミング言語
・連携している外部システム
・保守を担当している会社
・ハードウェアやソフトウェアのサポート期限
・設計書、仕様書、ソースコードなどの保管状況

 

といった情報を整理します。すべて分からなくても問題ありません。むしろ、「何が分からないのか」を把握すること自体が重要な調査結果になります。例えば、「システムを開発した会社は分かるが、ソースコードの保管場所が分からない」という状態が確認できれば、それが今後確認すべき事項になります。まずは把握できている情報と把握できていない情報を分けることで、次に何を調査すべきかが見えやすくなります。

 

業務への影響度から優先順位を付ける

複数の古いシステムを利用している場合、すべてを同じ優先順位で刷新する必要はありません。「古い順番」だけで判断するのではなく、システムが停止した場合の業務への影響も考慮して優先順位を付けます。

例えば、

 

A:停止すると主要業務が止まる
受発注、生産、在庫、出荷、請求などを担う基幹システム

B:停止すると一部業務へ影響する
社内申請、情報管理などの業務システム

C:代替手段が存在する
停止しても一定期間はExcelや手作業などで対応できるシステム

 

といった形で整理する方法があります。

さらに、「サポート期限」「障害発生頻度」「保守できる技術者の有無」「セキュリティ上の問題」などを組み合わせることで、対応すべきシステムの優先順位を判断しやすくなります。例えば、「非常に古いが業務への影響が小さいシステム」より、「比較的新しいもののサポート終了が迫っており、停止すると受注業務全体に影響するシステム」の方を優先すべき場合もあります。

 

すぐに刷新できない場合は「延命」と「刷新準備」を分けて考える

調査の結果、問題が見つかったとしても、予算や人員などの事情によって、すぐにシステム再構築へ進めないこともあります。その場合は、現在のシステムを安全に利用するための対策と、将来の刷新に向けた準備を分けて考えると整理しやすくなります。短期的には、バックアップ方法や障害対応手順を確認したり、必要なドキュメントを整備したりすることで、現在のリスクを抑えます。並行して、現行業務の整理やデータの確認、次期システムで必要となる機能の検討などを進めれば、将来の再構築に備えることができます。ただし、延命措置を繰り返すだけでは根本的な問題が解決しない場合もあります。「あと何年間利用するのか」「どの条件になったら刷新するのか」といった判断基準を設け、延命が目的化しないようにすることが重要です。

 

自社だけで判断できない場合は調査から相談する

既存システムについて、

「どの技術が使われているか分からない」

「開発会社と連絡が取れない」

「仕様書が見つからない」

「担当者が退職してしまった」

というケースも考えられます。

このような場合でも、必ずしも再構築を諦める必要はありません。

残っている設計書やソースコード、データベース、サーバー環境、実際のシステムの動作などを調査することで、現在の構成や機能を把握できる場合があります。自社だけで判断することが難しければ、システム開発会社などへ現状調査から相談することも選択肢です。その際には「新しいシステムを作りたい」と決めてから相談するのではなく、「現在のシステムを今後どうするべきか判断したい」段階から相談することで、継続利用、部分改修、段階的な刷新、全面再構築などを比較しやすくなります。

 

 

9.レガシーシステムの再構築で失敗しないための注意点

レガシーシステムの再構築は、古いプログラムを新しいプログラムへ書き換えれば完了するものではありません。特に10年、20年と使われてきた基幹システムには、その企業独自の業務ルールや例外処理が組み込まれていることがあります。それらを十分に把握しないまま刷新すると、新しいシステムは完成したものの、現場では使いにくいという問題が起こる可能性があります。再構築を成功させるためには、「技術を新しくすること」と「業務を適切に引き継ぐこと」の両方を考える必要があります。

 

現行システムをそのまま再現しない

レガシーシステム再構築で注意したいのが、現在のシステムをそのまま新しい技術で作り直すことです。既存システムの仕様をすべて踏襲すれば、移行後の混乱を抑えられるようにも思えます。しかし、長年使用してきたシステムには、現在では必要性が低くなった処理や、過去の業務に合わせて追加された機能が残っていることがあります。それらをすべて再現すると、古いシステムが抱えていた複雑さまで新システムへ引き継いでしまう可能性があります。

再構築を行う際には、

 

「この機能はなぜ必要なのか」

「現在も実際に使われているのか」

「もっと簡単な業務フローにできないか」

「別のシステムへ任せた方がよい機能ではないか」

 

という視点で一つずつ確認していくことが重要です。

現行システムを「正解」としてコピーするのではなく、現行システムを参考資料として、現在の業務に必要な仕組みを再設計していきます。

 

現場の要望をすべて機能化しない

利用者の意見を聞くことは重要ですが、出された要望をすべてシステムへ組み込めばよいわけではありません。例えば、部署ごとに細かな要望を追加していくと、システムが複雑化し、将来的な改修や保守が難しくなる可能性があります。これは、現在のレガシーシステムが複雑になった経緯を新しいシステムでも繰り返すことにつながりかねません。

要望が出た場合には、

「なぜその機能が必要なのか」

まで確認することがポイントです。

「この入力欄が欲しい」という要望であっても、目的を確認すると、「別部署へ情報を伝えるため」という背景が見つかるかもしれません。

そうであれば、単純に入力欄を増やすのではなく、部署間の情報共有方法そのものを見直した方が適切な場合があります。機能ではなく解決したい業務課題を基準に要件を整理することが、新しいシステムの複雑化を防ぐことにつながります。

 

データ移行と切り替え計画を後回しにしない

新システムの機能開発に意識が向きやすい一方で、忘れてはいけないのが「どうやって旧システムから新システムへ切り替えるのか」という問題です。

特に基幹システムでは、システムを切り替える間も日々の取引が続いています。

そのため、

 

・どの日時を基準に切り替えるか
・旧システムをいつまで利用するか
・どのデータを新システムへ移すか
・移行後のデータをどのように確認するか
・切り替え時に問題が起きた場合どうするか
・旧システムをどの程度の期間残すか

 

といった点を事前に決めておく必要があります。

また、データ移行は単純なコピーとは限りません。例えば、旧システムでは一つの項目に入力していた情報を、新システムでは複数項目に分けて管理する場合、データの変換が必要になります。データの欠損や重複、表記揺れなどが見つかることもあります。こうした問題はデータを実際に確認して初めて分かる場合があるため、再構築プロジェクトの早い段階から移行方法を検討しておくことが重要です。

 

再構築後の保守・運用まで考えておく

システム再構築のゴールを「新システムのリリース」に設定しないことも重要です。システムは完成後も、事業や業務の変化に合わせて継続的に利用していきます。

新しいシステムについても、

 

・誰が保守を担当するのか
・障害発生時はどこへ連絡するのか
・仕様変更や機能追加をどのように依頼するのか
・設計書やソースコードをどこで管理するのか
・改修履歴をどのように残すのか
・特定の担当者だけに知識が集中しない仕組みをどう作るのか

 

といった点を考えておく必要があります。ここを疎かにすると、せっかくシステムを刷新しても、10年後には再びブラックボックス化している可能性があります。レガシーシステム対策で重要なのは、一度新しくすることではなく、「再びレガシー化しにくい状態」を維持することです。設計書や仕様書を更新するルールを設ける、改修履歴を残す、複数の担当者がシステムを理解できる体制を作るなど、将来の保守性まで含めて検討しておきましょう。

 

レガシーシステムの再構築は大きなプロジェクトになりやすいからこそ、単なる「古いシステムから新しいシステムへの交換」で終わらせないことが大切です。現在の業務を整理し、必要な仕組みを見極め、将来の変更にも対応しやすい状態を作る。そこまでを再構築の目的として考えることで、システム刷新への投資を、その後の業務改善やDXにつなげやすくなるでしょう。

 

 

 

10.レガシーシステムの再構築を依頼する会社の選び方

レガシーシステムの再構築では、新しいシステムを開発する技術力だけでなく、既存システムを理解する力も重要です。通常の新規システム開発であれば、これから必要となる機能や業務要件を整理して設計できます。一方、レガシーシステムの再構築では、長年使われてきた既存システムの仕様やデータ、業務との関係を把握したうえで、新しい環境へ移行しなければなりません。特に、設計書が残っていない、開発会社へ問い合わせられない、古い技術が使用されているといったケースでは、既存システムの調査・解析から対応できる会社を選ぶ必要があります。

 

現行システムの調査・解析に対応できるか

まず確認したいのが、既存システムの調査に対応できるかどうかです。レガシーシステムでは、現在の仕様を正確に説明できる資料が残っているとは限りません。設計書があっても、その後に行われた改修内容が反映されておらず、実際のシステムと異なっていることもあります。その場合には、残っている資料だけでなく、ソースコードやデータベース、サーバー環境、実際の画面や処理などを確認しながら、現在のシステム構成を把握していく必要があります。

そのため、開発会社を選ぶ際には、

 

・ドキュメントが不足していても相談できるか
・既存プログラムの解析に対応できるか
・データベースの構造を調査できるか
・インフラを含めて確認できるか
・既存システムと業務の関係まで整理してもらえるか

 

などを確認するとよいでしょう。

「仕様書がないから再構築できない」と最初から判断するのではなく、まずどこまで調査可能なのかを相談することが大切です。

 

古い技術と新しい技術の両方を理解しているか

レガシーシステムの再構築では、古いシステムを理解する知識と、新しいシステムを設計する知識の両方が必要になります。例えば、古いプログラミング言語やオンプレミス環境で構築されたシステムを、現在のWebシステムやクラウド環境へ移行する場合を考えてみましょう。既存システムの仕組みを理解できなければ、現在必要な機能や処理を正しく抽出できません。

 

一方、既存技術に詳しいだけでは、将来的な拡張性や保守性を考えた新しいシステムを設計することが難しい場合があります。重要なのは、単に「新しい技術へ置き換えられるか」ではなく、現在の業務を理解したうえで、今後どのようなシステム構成にすることが適切なのかを提案できることです。

 

再構築後の保守まで相談できるか

システム開発会社を選ぶ際には、完成後の保守体制についても確認しておきましょう。新しいシステムも、導入した瞬間から長期間利用していくIT資産になります。事業内容の変化や法改正、利用者からの要望、外部サービスの変更などによって、将来的には機能追加や改修が必要になる可能性があります。

そのため、

 

・リリース後の保守に対応しているか
・障害発生時の問い合わせ先は明確か
・機能追加や改修を相談できるか
・ドキュメントを継続的に管理する体制があるか
・担当者が変更されても対応できる体制になっているか

 

などを確認しておくことをおすすめします。

再構築をきっかけに、現在抱えている「担当者しか分からない」「仕様書が更新されていない」といった問題を繰り返さない仕組みを作ることも重要です。

 

金額だけでなく提案内容や進め方を比較する

複数の開発会社へ相談すると、見積金額に大きな差が出ることがあります。ただし、最も安い会社が必ずしも自社に適しているとは限りません。例えば、一方の見積もりには現行システムの詳細な調査やデータ移行、導入支援まで含まれている一方、もう一方にはシステム開発だけが含まれているのであれば、単純に総額だけを比較することはできません。

見積もりを比較する際には、

「何をどこまで実施する費用なのか」

を確認することが大切です。

また、自社の要望をそのまま開発するだけでなく、「この機能は本当に必要なのか」「別の方法の方が業務を効率化できるのではないか」といった提案をしてもらえるかどうかも確認してみましょう。レガシーシステム再構築は、単純なシステム交換ではありません。今後長期間利用する業務基盤を作るプロジェクトだからこそ、技術力・調査力・提案力・保守体制を総合的に見てパートナーを選ぶことが重要です。

 

 

11.レガシーシステムの再構築を相談する前に整理しておきたいこと

レガシーシステムについて開発会社へ相談するとき、「システムのことが分からないので、何を伝えればよいか分からない」という担当者もいるのではないでしょうか。しかし、相談する段階ですべての仕様を把握しておく必要はありません。分からないことがあれば、「分からない」ということ自体が重要な情報になります。そのうえで、現在分かっている情報を整理しておけば、開発会社も状況を把握しやすくなります。

 

現在分かっているシステム情報を集める

まずは、社内に残っている情報を集めてみましょう。

例えば、

 

・システムの名称
・導入した時期
・開発した会社
・現在の保守会社
・利用している部署
・おおよその利用人数
・サーバーの設置場所
・クラウド利用の有無
・設計書や仕様書
・操作マニュアル
・ソースコード
・過去の改修資料
・保守契約書

 

などです。

すべて揃っていなくても構いません。古いシステムでは、「開発した会社が分からない」「仕様書が見つからない」ということもあり得ます。まずは何が残っていて、何が分からないのかを整理します。

 

現在困っていることを整理する

技術的な情報と同じくらい重要なのが、利用者が現在感じている問題です。

例えば、

 

「入力作業が多い」

「Excelへの転記が発生している」

「システムの動作が遅い」

「欲しいデータを簡単に取り出せない」

「新しい機能を追加できない」

「保守会社へ改修を依頼しても対応してもらえない」

「障害が起きたときに対応できる人が限られている」

 

といった内容です。

専門用語に置き換える必要はありません。むしろ、現場で実際に起きている問題をそのまま伝えた方が、開発会社側も課題の背景を理解しやすくなります。

 

今後実現したいことを考える

現在の問題だけでなく、「今後どうしたいのか」も整理しておくと、再構築の方向性を検討しやすくなります。

例えば、

 

「複数拠点から利用したい」

「営業担当者が外出先から情報を確認できるようにしたい」

「受注から請求まで一つのシステムで管理したい」

「他のクラウドサービスとデータを連携したい」

「蓄積しているデータを分析へ活用したい」

「将来的にAIを利用できる環境を整えたい」

 

などです。

この段階では、具体的な実現方法まで決める必要はありません。「クラウドを使う」「○○という製品を導入する」といった手段を先に決めるより、何を実現したいのかという目的を整理することを優先します。

 

予算や希望時期も分かる範囲で共有する

予算やスケジュールについても、決まっている範囲で伝えておくとよいでしょう。特に大規模な基幹システムでは、すべての要望を一度に実現することが難しい場合があります。

予算や期限が分かれば、

「まずこの範囲を刷新する」

「優先度の低い機能は次のフェーズへ回す」

「現在のシステムを一定期間維持しながら段階的に移行する」

といった選択肢も検討できます。

重要なのは、相談前に完璧な要件定義書を作ることではありません。現状・困っていること・実現したいことを分かる範囲で整理する。それだけでも、システム会社との打ち合わせを進めやすくなります。

 

 

12.レガシーシステムを再び生み出さないために必要なこと

レガシーシステムの再構築では、「古いシステムを新しくすること」だけに目を向けがちです。しかし、本当に重要なのはその先です。新しいシステムも、適切に管理しなければ、長期間の利用や改修を経て再び複雑化・ブラックボックス化する可能性があります。経済産業省が2025年に公表した「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」でも、IT資産の可視化や、情報システム部門と事業部門の連携、経営層の関与などがモダン化を進めるうえでの重要な論点として整理されています。

つまり、レガシーシステム対策は一度きりの刷新プロジェクトではなく、システムを継続的に管理・改善できる状態を作る取り組みとして考える必要があります。

 

ドキュメントと改修履歴を残す

まず基本となるのが、システムに関する情報を継続的に残すことです。設計書を作成していても、その後の改修内容が反映されなければ、数年後には実際のシステムとの間に差が生じます。

そこで、

 

・どの機能を変更したのか
・なぜ変更したのか
・どのシステムへ影響するのか
・データベースをどのように変更したのか
・いつ誰が変更したのか

 

などを追跡できるようにしておきます。重要なのは、システム導入時だけドキュメントを作るのではなく、改修とドキュメント更新をセットにすることです。

 

特定の担当者だけに知識を集中させない

「このシステムのことは○○さんしか分からない」という状態も、将来のブラックボックス化につながります。担当者が退職・異動したときに、システムの構成や運用方法が分からなくなる可能性があるためです。可能な範囲で複数人がシステムの概要を把握し、必要な情報へアクセスできる状態を作っておきましょう。外部の保守会社へ委託している場合も同様です。外部へ任せること自体が問題なのではなく、自社側でシステムの概要や契約範囲、重要な情報の所在を把握できていることが重要です。

 

定期的にシステムの状態を確認する

レガシー化を防ぐためには、問題が発生してから確認するのではなく、定期的にシステムの状態を確認することも有効です。

例えば、

 

・OSのサポート期限
・データベースのサポート期限
・ハードウェアの保守期限
・利用しているライブラリやミドルウェア
・バックアップの取得状況
・障害発生状況
・利用されていない機能
・増加している手作業

 

などを定期的に確認します。

これにより、「数か月後にサポートが終了すると初めて知った」といった事態を避けやすくなります。また、システムそのものに問題がなくても、事業や業務が変化すれば、システムが現状に合わなくなることがあります。技術面だけではなく、現在の業務に適したシステムであり続けているかという観点でも確認するとよいでしょう。

 

「壊れるまで使う」から計画的なIT投資へ

基幹システムは、企業の重要な業務を支える経営基盤の一つです。そのため、設備などと同じように、将来の更新を見据えて計画的に管理することが重要です。

「故障したら考える」

「サポートが終了してから対応する」

という状態では、十分な検討期間を確保できず、選択肢が限られる可能性があります。数年先の事業計画と合わせて、

「このシステムをあと何年利用するのか」

「次回の更新時には何を改善するのか」

「将来的にどのようなデータ活用を行いたいのか」

まで考えておけば、必要な予算や人員も準備しやすくなります。レガシー化を完全に防ぐことは難しくても、問題が深刻になる前に気付き、計画的に手を打てる状態を作ることは可能です。

 

 

13.まとめ:レガシーシステムは「古さ」ではなく現在のリスクから判断する

レガシーシステムというと、「何年以上使ったらレガシーなのか」「古いプログラミング言語を使っていたらレガシーなのか」と考えてしまいがちです。しかし、単純に使用年数だけで判断することはできません。長期間利用していても、適切な保守が行われ、必要な技術者やドキュメントが確保され、現在の事業にも柔軟に対応できているシステムであれば、直ちに再構築が必要とは限りません。

反対に、比較的新しいシステムであっても、

 

・システムの中身を把握している人がいない
・ドキュメントが残っていない
・サポート終了後の製品を使用している
・障害発生時の対応方法が決まっていない
・改修したくても変更できない
・データを他のシステムで活用できない

 

といった問題を抱えていれば、将来の事業運営に影響する可能性があります。

経済産業省が2018年のDXレポートで指摘した「2025年の崖」も、複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムがDXの足かせとなる問題に警鐘を鳴らしたものでした。そこで示された経済損失についても、一定の前提に基づく将来予測であり、2025年に実際にその損失が発生したことを示す実績値ではありません。そして2025年には、経済産業省が改めてレガシーシステムのモダン化に関する総括レポートを公表しています。そこでは、レガシーシステムの問題を解消し、ビジネスの変化に追従できる柔軟でモダンなシステムへ変えていくための対策が整理されています。したがって現在重要なのは、「2025年の崖に間に合ったか」ということではありません。

 

自社のシステムが現在どのような状態にあり、今後も安全かつ継続的に利用できるのか。事業の変化やDXに対応できる状態なのか。この視点から、現在のシステムを見直すことが重要です。まずは今回紹介したチェック項目などを参考に、分かる範囲から現状を整理してみましょう。分からない項目が多かったとしても、それ自体が現状把握の第一歩です。システムが正常に動いているうちに状態を把握し、必要に応じて保守体制の見直し、部分的な改修、段階的な刷新、再構築などを検討することで、将来的なリスクを抑えやすくなります。

 

 

レガシーシステムや基幹システムのお悩みはエイ・エヌ・エスへご相談ください

 

レガシーシステムについて、

「長年使っている基幹システムを今後も使い続けてよいのか分からない」

「開発当時の担当者が退職し、システムの詳細を把握できていない」

「設計書や仕様書が十分に残っていない」

「現在の保守会社から保守終了を告げられた」

「既存システムを調査したうえで、再構築するべきか検討したい」

といった課題を抱えている企業もあるのではないでしょうか。

エイ・エヌ・エスでは、オーダーメイドの基幹システム開発・再構築から、既存システムの保守・運用まで、企業のシステム環境に合わせた支援を行っています。レガシーシステムについても、必ずしも最初から「全面的に作り直す」と決める必要はありません。まず現在のシステムや業務の状況を確認し、今後どのような対応が適しているのかを整理することが重要です。

「資料が十分に残っていない」「システムの詳細が分からない」という段階でも、まずはご相談ください。

現在の課題と今後実現したいことを整理しながら、自社に適したシステムのあり方を検討していきましょう。

 

 

 

 

執筆者
株式会社エイ・エヌ・エス 取締役
システムインテグレーション事業部 第2グループ長 プロジェクトマネージャー
K.K
1996年、株式会社エイ・エヌ・エスに入社。入社後、SEとしての技術力と営業力を磨き、多くのプロジェクトに参画。要件定義から設計・開発、運用まで、上流から下流工程を幅広く経験する。現在はプロジェクトマネージャーとして、大規模プロジェクトを数多く成功に導く。「システムの導入効果を最大限感じてもらうこと」をモットーに、顧客特性に応じた最適なシステム提案を心がけている。

お客様の業界・課題に合った事例や支援内容も個別にご提案可能です。
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