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業務フロー見直しの方針と進め方:効率化に向けた具体策ガイド

業務フロー見直しの方針と進め方:効率化に向けた具体策ガイド

公開日:2026年1月27日 更新日:2026年1月29日

企業の経営者や業務改善担当者が抱える課題――業務の非効率や属人化、重複作業の解消には、業務フローの見直しが欠かせません。適切な見直し方針を定め、現状把握から改善策の策定・実施、効果検証まで体系的に進めることで、組織全体の業務効率や生産性を向上させられます。本記事では、業務フローの見直しに必要な基本知識から具体的手法、実践のポイントまでわかりやすく解説します。

 

 

目次
1.業務を理解する:フロー見直しの基礎知識

– 業務フローと業務プロセスの違いを知る

– 業務フローの役割と改善が必要な理由

– 業務全体を俯瞰する可視化の重要性

2.業務フロー見直しの現状把握の方法

– 関係者や作業タスクの洗い出し

– 可視化ツールで業務フローを正確に描く

– 現場ヒアリングとデータ分析による課題抽出

3.改善対象の優先順位をつける戦略

– 課題の重要度と影響を評価する方法

– 改善効果の見積もりと期待値計算

– 効果的なスモールスタートのすすめ

4.見直し方針設定と具体的目標策定

– 現実的で測定可能な目標を設定する

– 短期・中長期の改善計画の区分け

– 大局と細部を両立させる方針作成

5.改善策の展開と実行のポイント

– 業務ルールの見直しと手順の標準化

– ITツールの導入と自動化推進の活用法

– アウトソーシングやBPO導入の効果的使い方

6.業務フロー改善を支えるテクノロジー活用

– 業務可視化ツールの選び方と運用法

– 生産性向上に貢献するクラウドストレージ

– AI・自動化技術による業務効率化手法

7.社員参加を促す現場主導の改善体制

– 現場の意見を反映させるコミュニケーション術

– 経営層のサポートで推進力を高める方法

– 改善文化を組織に根付かせる仕組み作り

8.効果測定とPDCAサイクルの活用法

– KPI設定とデータ分析で効果を正確に把握

– 改善策の振り返りと次の課題抽出方法

– PDCAを回し続けるためのポイント

9.見直し方針の継続的運用と拡大戦略

– 定期的なフロー点検の重要性

– 成功事例を他部署へ横展開する方法

– 変化に柔軟に対応し続ける組織づくり

10.まとめ:業務フロー見直しの方針と実践で目指す効率的組織運営

 

1. 業務を理解する:フロー見直しの基礎知識

業務改善の第一歩は、現在行われている活動を正しく「定義」し、「理解」することから始まります。多くの現場では「忙しい」「効率が悪い」といった感覚的な不満はあっても、具体的にどの地点に問題があるのかを客観的に指摘できる状態にはありません。まずは、見直しの土台となる基礎知識を整理します。

業務フローと業務プロセスの違いを知る

日常的に混同されがちな「業務プロセス」と「業務フロー」ですが、改善の文脈では明確に区別して考える必要があります。

  • 業務プロセス(Business Process): 「何のために(目的)」「何を入力して(インプット)」「何を出力するか(アウトプット)」という、一連の活動の「論理的な一塊」を指します。例えば「受注から納品まで」という大きな目的レベルの概念です。
  • 業務フロー(Business Flow): プロセスを具体化し、「誰が」「いつ」「どの順番で」「どのような判断基準で」動くのかという、作業の「具体的な流れ」を時系列や担当者別に図式化したものです。

プロセスが「戦略」に近い概念であるのに対し、フローは「戦術」や「実施手順」を指します。業務改善においては、上位概念であるプロセスの妥当性を問い直しつつ、具体的なフローの無駄を削ぎ落とすという二段構えの視点が求められます。

業務フローの役割と改善が必要な理由

業務フローは、組織における「仕事の地図」です。この地図が古くなったり、人によって異なる解釈がなされたりすると、以下のような問題が生じます。

  1. 属人化の進行: 特定の個人しか手順を知らない「ブラックボックス」が生まれます。
  2. 品質のバラツキ: 担当者によって手順が異なるため、アウトプットの質が一定になりません。
  3. ボトルネックの放置: 特定の工程で仕事が滞留していても、全体像が見えないために原因が特定できず、抜本的な対策が打てません。

改善が必要な理由は、単なる「時短」のためだけではありません。市場環境の変化やITツールの進化に伴い、かつては最適だったフローも時間の経過とともに「負の遺産」へと変わるからです。定期的な見直しは、組織の代謝を正常に保つために不可欠な儀式なのです。

業務全体を俯瞰する可視化の重要性

「木を見て森を見ず」という状態は、部分最適という罠を招きます。例えば、営業部門が入力作業を楽にするために導入したツールが、管理部門の集計作業を倍増させてしまうようなケースです。 可視化の最大の功績は、関係者全員が「同じ土俵」で議論できるようになることです。部署間をまたぐ「ボールの受け渡し(インターフェース)」を視覚的に捉えることで、組織の壁に起因する無駄(二重チェックや不要な承認フローなど)が初めて浮き彫りになります。

2. 業務フロー見直しの現状把握の方法

現状把握を疎かにしたまま改善策を議論するのは、検査をせずに手術を行うようなものです。正確な「As-Is(現状)」を描き出すための実践的なステップを解説します。

関係者や作業タスクの洗い出し

まずは、対象となる業務に関わるすべてのプレイヤーと、発生しているタスクを漏れなくリストアップします。

  • 関係者の特定: 主担当者だけでなく、承認者、情報提供者、成果物の利用者、さらには外部のベンダーや顧客も含めます。
  • タスクの粒度を揃える: 「資料を作る」という粒度では不十分です。「データを集める」「下書きを作る」「上長の確認を受ける」といった、判断や受け渡しが発生する単位まで分解します。

可視化ツールで業務フローを正確に描く

頭の中にあるフローをアウトプットする際は、標準的な記法を用いることが推奨されます。

  • スイムレーン図の活用: 縦軸(または横軸)に担当部署や役職を並べ、時間の流れとともにタスクを配置します。これにより「誰から誰へ、いつ情報が流れるか」が明確になります。
  • 記号の統一: 処理(四角)、判断(菱形)、書類(波形)などの記号を統一することで、誰が見ても一目で理解できるフローになります。最近では、ExcelやPowerPointだけでなく、LucidchartやMiro、Notionのマーメイド記法など、共同編集が可能なクラウドツールを用いることで、リアルタイムな現状把握が進みます。

現場ヒアリングとデータ分析による課題抽出

図面が完成したら、そこに「命」を吹き込みます。

  • 現場の声(Voice of Customer/Employee): 「マニュアルにはこう書いてあるが、実際はこうやっている」「ここでいつも1時間待たされる」といった、フロー図の隙間に隠れた真実をヒアリングで引き出します。
  • 事実(データ)による裏付け: 1つのタスクに何分かかっているか、月に何件の差し戻しが発生しているかといった数値を計測します。感覚的な「忙しい」を、「月100時間の超過勤務」という定量的な課題へと変換します。

3. 改善対象の優先順位をつける戦略

現状把握で見つかった課題すべてを同時に解決しようとすると、リソースが分散し、現場の疲労だけが蓄積します。賢明なリーダーは、どこに「テコ」を入れれば最大の効果が出るかを見極めます。

課題の重要度と影響を評価する

課題に優先順位をつける際、以下の3つの軸でスコアリングを行います。

  1. インパクト(効果): その課題が解決された際、どれだけのコスト削減、売上向上、リスク回避に繋がるか。
  2. 緊急度: 今すぐ対処しなければ法的リスクや重大な顧客離脱を招くか。
  3. 実現性(難易度): 予算、技術、組織文化の観点から、現実的な期間で解決可能か。

改善効果の見積もりと期待値計算をする

優先順位を決定するための客観的な指標として「ROI(投資対効果)」の簡易的な試算を行います。

  • 削減期待値 = (削減される作業時間 × 担当者の時給 × 発生頻度)+ 削減される外注費・システム費 例えば、月間100回発生する「5分の手入力」を自動化すれば、月間約8時間の削減になります。これが全社10部署で展開されれば月間80時間となり、ツール導入のコストを十分に正当化できる数値が見えてきます。

効果的なスモールスタートから始める

最初から大規模なシステム刷新や組織改編を目指すのはリスクが高すぎます。改善活動を加速させるのは「成功体験」です。

  • クイック・ウィン(Quick Win)の選定: 「効果が高く、かつ簡単にできる」課題を一つ選び、2週間〜1ヶ月程度で結果を出します。
  • パイロット部署の運用: 全社展開する前に、変化に柔軟な1つのチームで新フローを試し、そこで出た不具合を修正します。これにより、全社展開時の「現場の抵抗」を最小限に抑えることができます。

4. 見直し方針設定と具体的目標策定

優先順位が決まったら、次に行うべきは「どこを目指すのか」という旗印を立てることです。

現実的で測定可能な目標を設定する

目標設定には、SMARTの法則(Specific:具体的、Measurable:測定可能、Achievable:達成可能、Relevant:関連性、Time-bound:期限)を適用します。

  • NG例: 「請求業務を効率化する」
  • OK例: 「請求書発行に関わる残業時間を、〇月末までに前年比30%削減する」 測定可能な目標にすることで、プロジェクトの中盤で「今、順調なのか」を客観的に判断できるようになります。

短期・中長期の改善計画の区分け

すべての改善を一つのフェーズに詰め込む必要はありません。

  • 短期(1〜3ヶ月): ECRS(排除、結合、入替、簡素化)を適用した手順の変更、Excelマクロの導入、不要な会議の廃止など。
  • 中長期(半年〜2年): ERPやSaaSの導入、部署の統合、ビジネスモデルの転換など。 短期的な成果でプロジェクトの予算と信頼を確保しつつ、中長期的な抜本改革を進めるという「時間軸の戦略」が、改善の持続性を支えます。

大局と細部を両立させる方針作成

方針を策定する際は、常に「顧客価値」という大局を忘れてはなりません。 「社内のチェック作業を楽にするために、顧客の待ち時間を増やす」ような改善は本末転倒です。「顧客満足度の向上と、従業員の負荷軽減を同時に実現する」といった、トレードオフを乗り越えるための方針を言語化します。 一方で、細部においては「誰がいつ、このボタンを押すのか」というレベルまで具体的に落とし込む「徹底した現場目線」を保持します。この大局の哲学と、細部の解像度が両立して初めて、実効性のある改善方針が完成します。

5. 改善策の展開と実行のポイント

現状把握と方針策定を経て、いよいよ具体的な「打ち手」を講じるフェーズに移行します。改善案を机上の空論に終わらせず、現場で確実に機能させるためには、ルール、ツール、リソースの3点を最適に組み合わせることが不可欠です。

業務ルールの見直しと手順の標準化

多くの業務フローが停滞する原因は、システム以前に「ルールの曖昧さ」にあります。「担当者の裁量」に委ねられた部分は、属人化を招き、品質のバラツキや判断待ちの停滞を生みます。

  • 例外処理のルール化: 業務が止まる最大の要因は「イレギュラーへの対応」です。頻出する例外パターンを洗い出し、「この場合はこう判断する」という分岐条件を明文化します。
  • 承認プロセスのスリム化: 「とりあえず課長と部長の印鑑が必要」という慣習を見直します。金額やリスクの大きさに応じて承認権限を委譲し、並列承認(同時並行で確認を行う)を導入することで、待ち時間を劇的に短縮できます。
  • 標準作業手順書(SOP)の整備: 誰が担当しても同じ時間・品質で完了できるよう、手順を視覚的にまとめます。文字だけでなく動画やスクリーンショットを多用し、「迷う余地」をなくすことが標準化の極意です。

ITツールの導入と自動化推進の活用法

ITツールは、標準化されたフローを「加速」させるためのエンジンです。ただし、非効率なフローをそのままデジタル化しても、混乱を高速化させるだけに終わります。

  • 「情報の1回入力」を徹底する: 複数のExcelやシステムに同じ情報を打ち直す作業を排除します。API連携やデータインポート機能を活用し、上流で入力されたデータが下流へ自動で流れる「データの一気通貫(シングル・ソース・オブ・トゥルース)」を目指します。
  • RPAによる単純作業の代替: データの転記、照合、定型メールの送信といった「考える必要のない作業」はRPA(Robotic Process Automation)に委ねます。これにより、社員はより高度な判断が必要な業務にリソースを集中できるようになります。

アウトソーシングやBPO導入の効果的使い方

自社のコアコンピタンス(核となる強み)に関わらない定型業務は、外部の専門リソースを活用する「BPO(Business Process Outsourcing)」を検討すべきです。

  • 「切り出し」前の棚卸し: 業務を外部に出す前に、その業務自体が必要かどうかを必ず見直します。不要な業務をアウトソーシングしても、コストが増えるだけです。
  • 専門性の活用: 単なる人手不足の解消ではなく、経理や給与計算、カスタマーサポートなど、その分野の専門業者が持つ「洗練されたフロー」を自社に取り入れるという視点が重要です。

6. 業務フロー改善を支えるテクノロジー活用

現代の業務改善において、テクノロジーをどう選定し、運用するかは戦略の成否を分ける決定的な要因です。

業務可視化ツールの選び方と運用法

業務フローを「描く」だけでなく、継続的に「管理」するためのツール選定が必要です。

  • 共同編集機能の重視: 改善担当者一人で描くのではなく、現場スタッフがリアルタイムでコメントや修正を入れられるオンラインホワイトボード(Miro、Lucidchart等)を選びます。
  • プロセスマイニングの検討: 大規模な組織では、PCの操作ログやシステムのイベントログから、実際の業務フローをAIが自動で描き出す「プロセスマイニングツール」の導入も有効です。人間の記憶違いや「建前」に左右されない、真のボトルネックを特定できます。

生産性向上に貢献するクラウドストレージ

情報の「探し物」や「共有のタイムラグ」は、業務フローにおける最大の隠れたムダです。

  • 一元化されたナレッジ管理: 各自のPC内に保存されたデータをクラウド(Google Drive、SharePoint、Box等)へ集約します。「最新版がどれかわからない」という事態を防ぐため、版管理機能や同時編集機能をフル活用します。
  • アクセス権限の最適化: セキュリティを担保しつつ、必要な人が必要な時に情報にアクセスできる権限設計を行います。情報の「壁」を取り払うことが、フローの速度を上げる最短ルートです。

AI・自動化技術による業務効率化手法

生成AI(ChatGPT等)の登場により、非定型業務の自動化も現実的になりました。

  • 非構造化データの処理: 議事録の要約、顧客からの問い合わせメールの分類、大量の契約書からの特定項目の抽出など、人間が行っていた「読み込みと解釈」をAIに任せることができます。
  • 思考のパートナーとしてのAI: 新しい業務フローを設計する際、AIに「このフローに潜むリスクを5つ指摘して」と問いかけ、検証の精度を高める活用法も普及しています。

7. 社員参加を促す現場主導の改善体制

業務改善の最大の障壁は「現場の抵抗」です。トップダウンの押し付けではなく、現場が「自分たちの仕事が楽になる」と実感できる体制づくりが不可欠です。

現場の意見を反映させるコミュニケーション術

改善担当者は「教える人」ではなく「聞く人」であるべきです。

  • 「不平不満」を「改善の種」に変える: 現場から出る「めんどくさい」「意味がない」というネガティブな言葉こそ、改善の宝庫です。それらを否定せず、「どうなれば楽になりますか?」というポジティブな問いに変えて深掘りします。
  • 心理的安全性の確保: 「今のやり方を変える=これまでの自分の否定」と捉えられないよう、現在の努力を認めた上で、「もっと輝くための変化」であることを強調します。

経営層のサポートで推進力を高める方法

現場主導といえども、部門間調整や予算承認には経営層のバックアップが欠かせません。

  • 改善を「全社戦略」に位置づける: 経営層が「業務改善は付随作業ではなく、会社の成長戦略そのものである」と宣言し、改善活動に充てる時間を業務時間として正式に認めます。
  • リソースの優先配分: ITツールの導入コストや、一時的な業務停滞を許容する「度量」を経営層が示すことで、現場は安心して変革に挑めます。

改善文化を組織に根付かせる仕組み作り

一時的なイベントで終わらせないための「仕掛け」が必要です。

  • 「小さな成功」の共有: 改善によって月5時間削減できた、といった些細な成功体験を全社で表彰したり、イントラサイトで紹介したりします。
  • 改善提案制度のカジュアル化: 堅苦しい提案書ではなく、チャットで一行「ここをこうしたい」と呟けるような、ハードルの低い提案窓口を設けます。

8. 効果測定とPDCAサイクルの活用法

改善は「やって終わり」ではありません。実施した施策がどのような結果をもたらしたかを検証し、さらなる高みを目指すサイクル(PDCA)を回し続ける必要があります。

KPI設定とデータ分析で効果を正確に把握

感覚的な「良くなった」ではなく、数値で語る文化を作ります。

  • リードタイムの短縮: 受注から納品、あるいは依頼から承認までにかかる時間の変化を計測します。
  • エラー率・手戻り率の低下: フローの見直しによって、ミスの発生や差し戻しがどれだけ減ったかをカウントします。
  • 残業時間の削減: 削減された工数が、実質的な労働時間の短縮にどう寄与したかを分析します。

改善策の振り返りと次の課題抽出方法

測定したデータを元に、定期的なレビューを行います。

  • KPT(Keep, Problem, Try)法: 「継続すべき良い点(Keep)」「まだ残っている、あるいは新たに発生した課題(Problem)」「次に試すべきこと(Try)」を整理します。
  • 現場の「納得感」の確認: 数字上は良くなっていても、現場の負担が心理的に増えていないかを確認します。歪みが出ている場合は、即座にフローを微調整します。

PDCAを回し続けるためのポイント

改善に「完成」はありません。

  • 「朝令暮改」を恐れない: やってみて不都合があれば、すぐに変えればよいという柔軟な姿勢を持ちます。
  • 改善の「定例化」: 1年に1回といった頻度ではなく、週次や月次のミーティングの一部に「フローの微調整」を組み込むことで、組織の代謝を常に高く保ちます。

9. 見直し方針の継続的運用と拡大戦略

業務フローの見直しは、一度のプロジェクトで完結する「イベント」ではありません。市場環境、顧客のニーズ、そしてテクノロジーは日々進化しており、今日最適化されたフローも、明日には新たな「負の遺産」となる可能性があります。組織が持続的に成長し、高い生産性を維持するためには、改善活動を日常のオペレーションに組み込み、その成果を組織全体へ波及させていく戦略的なアプローチが不可欠です。

定期的なフロー点検の重要性

業務フローを放置すると、組織には必ず「エントロピーの増大」が起こります。法改正への場当たり的な対応、担当者の交代による独自ルールの追加、形骸化したチェック工程の蓄積などが、知らぬ間にフローを複雑化させていくからです。

  • 定期健診としての「棚卸し」: 少なくとも半年に一度、あるいは四半期ごとに、主要な業務フローが現在の実態と乖離していないかを点検する機会を設けます。これは「不具合が起きてから直す」のではなく、予防医療のように「不具合が起きにくい体質」を維持するためのものです。
  • 「なぜ?」の再定義: 定期点検では手順だけでなく、その工程の「存在意義」を問い直します。「前任者から引き継いだから」という理由だけで残っている作業を、現在のビジネスゴールに照らして再評価します。
  • IT資産の鮮度確認: 導入しているSaaSやツールが最新の機能を備えているか、より安価で高機能な代替手段が登場していないかを確認します。ツールの陳腐化は、フローの停滞に直結します。

成功事例を他部署へ横展開する方法

特定の部署で劇的な改善成果が出たとしても、それがその部署内だけで閉じていては、組織全体の最適化には繋がりません。成功のノウハウを「共通言語化」し、他部署へ移植するための仕組みが必要です。

  • 「改善ナレッジ」の構造化: 成功事例を共有する際、「ツールを導入した」という結果だけではなく、「どのような課題に対し、どのフレームワーク(ECRSなど)を使い、現場の抵抗をどう乗り越えたか」というプロセスをパッケージ化します。これにより、背景の異なる他部署でも応用が可能になります。
  • 社内博覧会(事例発表会)の開催: 形式的な報告書ではなく、担当者が工夫した点や苦労した点を直接語る場を設けます。現場のリアルな声は、他部署のリーダーにとって強力な刺激となり、「自分たちもできる」というポジティブな連鎖を生みます。
  • 標準プラットフォームの構築: 優れた改善案が、特定の部署の独自ツールに依存しないよう、全社共通のITインフラ(ローコードツールやワークフローシステム)上で展開することを推奨します。これにより、導入のハードルが劇的に下がります。

変化に柔軟に対応し続ける組織づくり

最終的なゴールは、外部からの指示がなくても現場が自らフローを最適化し続ける「自律型組織」の構築です。

  • 「現状否定」を歓迎する文化: 「今のやり方が最高だ」と満足した瞬間に、組織の劣化が始まります。常に「もっと良い方法があるはずだ」という健全な危機感と好奇心を持つことを評価する文化を醸成します。
  • 心理的安全性の担保: 改善を提案したことで「余計な仕事を増やした」と非難されたり、効率化によって「自分の仕事がなくなる」と恐れたりする環境では、真の改善は生まれません。効率化によって生まれた時間を、新しい挑戦や自己研鑽に充てることを会社として保証します。
  • アジャイルな意思決定: 完璧なフローを求めて時間をかけるよりも、まずは60点の完成度で実行し、走りながら微調整していく「アジャイル(俊敏)」な姿勢を組織全体で共有します。

10. まとめ:業務フロー見直しの方針と実践で目指す効率的組織運営

本稿を通じて解説してきた業務フロー見直しのプロセスは、単なる「事務作業の整理」という枠を超え、組織の意思決定を研ぎ澄まし、従業員の創造性を解き放つための戦略的活動です。

効果的な業務フローの見直しと実践において、私たちが目指すべき本質的な姿は以下の3点に集約されます。

  1. 「透明性」の高い組織: 誰が、いつ、どこで、何をしているのかが可視化されている状態。これは監視のためではなく、互いの負荷を理解し、困っている時に助け合える「真のチームワーク」を機能させるための基盤です。可視化されたフローは、組織の風通しを良くし、無駄な疑心暗鬼や政治的な駆け引きを排除します。
  2. 「価値」に集中する組織: ECRSの原則を徹底し、付加価値を生まない作業を極限まで削ぎ落とした状態。社員が「作業」ではなく、顧客の課題を解決し、新しいアイデアを形にする「仕事」に時間を使えるようになります。AIやITツールは、人間がこの「人間らしさ」を追求するための強力な相棒となります。
  3. 「学習」し続ける組織: PDCAサイクルを回し、失敗を恐れずに実験を繰り返す状態。業務フローを固定的なマニュアルではなく、常に進化し続ける「動的なドキュメント」と捉えることで、組織は変化に対して脆弱になるどころか、変化を糧に強くなることができます(反脆弱性)。

業務フローの見直し方針を策定し、現場と共に実践していく道筋は、決して平坦ではありません。しかし、現状の違和感に蓋をせず、一つひとつのタスクの「意味」を問い直すことから、確実に未来の組織像は変わっていきます。

今回のガイドが、貴社の組織運営をより軽やかで、力強いものへと変える一助となることを願っています。

 

 

 

 

  • 株式会社エイ・エヌ・エス 取締役

    システムインテグレーション事業部 第2グループ長 プロジェクトマネージャー

    K.K

    1996年、株式会社エイ・エヌ・エスに入社。
    入社後、SEとしての技術力と営業力を磨き、多くのプロジェクトに参画。
    要件定義から設計・開発、運用まで、上流から下流工程を幅広く経験する。
    現在はプロジェクトマネージャーとして、大規模プロジェクトを数多く成功に導く。
    「システムの導入効果を最大限感じてもらうこと」をモットーに、
    顧客特性に応じた最適なシステム提案を心がけている。



 

 

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