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AIで基幹システムはどこまで作れる?システム開発の未来を解説
公開日:2026年10月20日 更新日:2026年10月19日

 

近年、生成AIの進化によって、システム開発の進め方が大きく変わりつつあります。これまでエンジニアが手作業で行っていたプログラミングやテストなどの一部をAIが支援できるようになり、企業の基幹システム開発においても活用が進んでいます。

こうした変化を受けて、「AIだけで基幹システムを作れるのか」「従来よりも短期間・低コストで開発できるのか」と疑問を持つ企業も増えているのではないでしょうか。

実際、AIを活用すれば、要件整理や設計、コード生成、テストなど、基幹システム開発のさまざまな工程を効率化できる可能性があります。一方で、企業ごとに異なる業務ルールへの対応や、既存システムとの連携、セキュリティ・品質の確保など、AIだけでは判断が難しい部分も残されています。

重要なのは、AIですべてを自動化することではなく、AIが得意とする作業と、エンジニアが担うべき役割を適切に組み合わせることです。

本記事では、AIで基幹システムをどこまで作れるのか、具体的な活用工程やメリット、課題を整理しながら、AI時代のシステム開発が今後どのように変わっていくのかを解説します。

 

 

ポイント 結論
AIで基幹システムは作れる? AIを活用した基幹システム開発はすでに可能です。ただし、複雑な業務要件への対応や品質確保には、エンジニアによる判断・確認が必要です。
AIを活用できる工程 要件整理、設計・仕様書作成、プログラミング、テスト、保守・運用など、開発のさまざまな工程でAIを活用できます。
期待できるメリット 作業の効率化によって開発期間の短縮やコスト削減が期待できます。また、エンジニアが業務理解や設計、品質管理などに集中しやすくなります。
AI時代の開発の方向性 AIとエンジニアが協働する開発が重要になります。AIによる効率化が進めば、自社業務に合わせたフルオーダーメイド開発も検討しやすくなる可能性があります。

 

 

目次

1. AIで基幹システムはどこまで作れる?
– AIを活用した基幹システム開発はすでに可能
– AIで作れる部分と人間の判断が必要な部分
– AIだけで基幹システムを完成させることはできる?

2. 基幹システム開発でAIを活用できる工程
– 要件定義・業務整理への活用
– 設計・プログラミングへの活用
– テスト・品質確認への活用
– 保守・運用への活用

3. AIを活用した基幹システム開発のメリット
– 開発期間の短縮が期待できる
– 開発コストを抑えられる可能性がある
– 仕様変更や機能追加に対応しやすくなる
– エンジニアが重要な業務に集中できる

4. AIだけでは難しい基幹システム開発の課題
– 複雑な業務ルールや例外処理への対応
– 既存システムとの連携・データ移行
– セキュリティ・性能・品質の確保
– AIが生成したコードの保守性と責任の所在

5. AI時代の基幹システム開発はどう変わる?
– 従来のスクラッチ開発とAI活用型開発の違い
– AIエージェントによる開発の自動化
– AIとエンジニアが協働する開発体制
– フルオーダーメイド開発の可能性が広がる

6. AIを活用した基幹システム開発を成功させるポイント
– AI導入よりも業務課題の整理を優先する
– AIに任せる工程と人間が担う工程を分ける
– 開発会社のAI活用力と業務理解力を確認する
– 開発後の保守・運用まで見据えて計画する

7. まとめ|AIで基幹システムはどこまで作れるのか

 

 

 

 

1.AIで基幹システムはどこまで作れる?

AIの進化によって、基幹システムの開発にも新しい選択肢が生まれています。従来はエンジニアが一つひとつ設計・実装していた作業の一部を、生成AIが支援できるようになりました。

ただし、「AIで基幹システムを作れる」という言葉には、AIを開発の補助として利用する場合と、AIに開発作業そのものを任せる場合の両方が含まれています。

まずは、現在のAIで実現できる範囲と、依然として人間の判断が必要な部分を整理していきましょう。

 

AIを活用した基幹システム開発はすでに可能

基幹システムとは、販売管理、在庫管理、生産管理、会計管理、人事管理など、企業の主要な業務を支えるシステムのことです。

こうしたシステムは、企業ごとの業務ルールや取引条件に合わせて構築されることが多く、一般的なWebサイトや簡単な業務アプリと比べて複雑な処理が求められます。

従来のシステム開発では、エンジニアが要件を整理し、設計書を作成したうえでプログラミングを行い、テストを繰り返しながらシステムを完成させていました。

現在は、この開発プロセスのさまざまな場面で生成AIを活用できます。

例えば、業務要件をもとに必要な機能を整理したり、画面イメージを作成したり、プログラムのたたき台を生成したりすることが可能です。

さらに、AIコーディングエージェントを利用すれば、既存のプログラムを調査し、複数のファイルを修正したうえでテストを実行するといった、一連の開発作業を支援できる場合もあります。

つまり、AIを活用しながら基幹システムを開発することは、すでに現実的な選択肢になっています。

ただし、AIを利用することで必ず開発期間やコストが削減されるわけではありません。業務の複雑さや既存システムの状態、AIが生成した成果物の確認に必要な工数によって、得られる効果は異なります。

AIを単純なコード生成ツールとして利用するのではなく、開発工程全体の中で適切に活用することが重要です。

 

AIで作れる部分と人間の判断が必要な部分

基幹システム開発では、AIが得意とする作業と、人間が中心となって進めるべき作業があります。

AIが活用しやすいのは、情報の整理や成果物のたたき台作成、一定のルールに基づく処理の生成などです。

例えば、仕様書をもとにデータ登録画面のプログラムを作成したり、入力内容をチェックする処理を生成したりする作業は、AIが支援しやすい領域です。

また、既存コードの内容を説明したり、不具合の原因となりそうな箇所を洗い出したりすることもできます。

一方で、企業の業務を理解し、何をシステム化すべきか判断することは、依然として人間が中心となって行う必要があります。

例えば、販売管理システムを構築する場合でも、企業によって見積から受注、出荷、請求までの流れは異なります。

得意先ごとに価格が変わる場合や、在庫が不足した際の処理、返品やキャンセル時の対応など、細かな業務ルールも考慮しなければなりません。

AIはこうした情報を整理することはできますが、そもそも業務ルールが明確になっていなければ、正しいシステムを設計することは困難です。

また、セキュリティ対策やシステム全体の構成、将来的な拡張性、運用時のトラブル対応なども、専門的な知識を持つエンジニアが判断する必要があります。

AIはシステムを作る作業を支援できますが、企業にとって適切なシステムを判断する役割まで完全に代替できるわけではありません。

 

AIだけで基幹システムを完成させることはできる?

AIに「販売管理システムを作って」と指示すれば、画面やプログラムの一部を短時間で生成できる場合があります。

実際、比較的シンプルな業務アプリや試作品であれば、AIを中心に作成できる範囲は広がっています。

しかし、企業が日常業務で利用する本番用の基幹システムとなると、求められる条件は大きく変わります。

基幹システムでは、正しいデータを継続的に処理できることはもちろん、複数の担当者が同時に利用できることや、障害が発生した場合にも業務への影響を抑えられることなどが重要です。

また、既存システムとの連携や過去データの移行、利用者ごとのアクセス権限、バックアップなども考慮しなければなりません。

AIが生成したプログラムが一見正常に動作していても、実際の業務で使用すると想定外の問題が発生する可能性があります。

例えば、通常の受注処理は問題なく動作していても、返品や分納、複数拠点間での在庫移動といった例外的な処理に対応できていない場合があります。

こうした問題を防ぐためには、実際の業務を理解したうえで要件を整理し、十分なテストと検証を行う必要があります。

そのため、現時点ではAIだけに任せて、複雑な基幹システムを安全かつ確実に完成・運用できると考えるのは適切ではありません。

AIによって開発作業の多くを効率化しながら、要件定義や設計、品質確認などの重要な工程をエンジニアが担う方法が、現実的なアプローチといえるでしょう。

 

 

2.基幹システム開発でAIを活用できる工程

AIはプログラミングだけでなく、基幹システム開発のさまざまな工程で活用できます。

一般的なシステム開発では、要件定義、設計、プログラミング、テスト、リリース、保守・運用といった工程を経てシステムを構築します。

生成AIを適切に取り入れることで、情報整理やドキュメント作成、コード生成、確認作業などを効率化できる可能性があります。

ここでは、各工程でどのようにAIを活用できるのかを具体的に見ていきましょう。

 

要件定義・業務整理への活用

基幹システム開発では、最初に企業の業務内容や課題を整理し、必要な機能を明確にする要件定義が重要です。

例えば、「現在Excelで管理している受発注業務をシステム化したい」という要望があった場合、単純にExcelの内容を画面へ置き換えればよいわけではありません。

誰がどの情報を入力するのか、どのタイミングで承認が必要なのか、他のシステムとどのように連携するのかなど、さまざまな条件を整理する必要があります。

生成AIは、こうした要件定義の補助として活用できます。

例えば、ヒアリング内容をもとに現在の業務フローを整理したり、必要な機能の候補を洗い出したり、確認が不足している項目を抽出したりすることが可能です。

また、既存の仕様書や業務マニュアルを参照しながら、現在のシステムがどのような処理を行っているのかを整理する用途にも利用できます。

これにより、エンジニアが情報をまとめる作業を効率化し、顧客との認識合わせや業務課題の検討に時間を充てやすくなります。

ただし、AIが整理した内容をそのまま要件として確定することは避けるべきです。

業務の背景や例外的な処理を確認し、最終的な要件を決めるのは人間の役割です。

 

設計・プログラミングへの活用

要件定義で必要な機能が明確になった後は、システムの構成や画面、データベースなどを設計し、プログラムを作成していきます。

この工程は、生成AIの活用によって効率化が期待できる領域の一つです。

例えば、要件をもとに画面構成の案を作成したり、データベースの設計案を整理したり、仕様書のたたき台を作成したりできます。

さらに、画面イメージやモックを早い段階で作成すれば、完成後のイメージを顧客と共有しやすくなります。

基幹システム開発では、開発が進んでから「想定していた画面と違う」「必要な機能が不足している」と判明すると、修正に多くの工数がかかる場合があります。

AIを活用して初期段階から具体的なイメージを作成できれば、こうした認識のずれを早期に発見できる可能性があります。

プログラミングの工程でも、AIはさまざまな作業を支援できます。

例えば、データの登録・更新・検索処理、入力チェック、帳票出力などのプログラムのたたき台を作成したり、既存コードの修正案を提示したりできます。

さらに、AIコーディングエージェントでは、関連する複数のファイルを調査し、必要な変更を加えながら作業を進めることも可能です。

ただし、生成されたコードが正しく動作するか、既存機能に影響がないか、セキュリティや性能に問題がないかは、エンジニアが確認する必要があります。

AIがコードを作成できるようになっても、システム全体の品質を保証するための設計・確認作業が不要になるわけではありません。

 

テスト・品質確認への活用

基幹システムでは、プログラムを作成した後のテストも重要です。

特に販売管理や在庫管理、会計管理などのシステムでは、処理の誤りが企業の業務や取引に直接影響する可能性があります。

そのため、正常な操作だけでなく、異常な入力や想定外の操作、複数の条件が重なった場合なども確認する必要があります。

生成AIは、こうしたテスト工程でも活用できます。

例えば、仕様書をもとにテストケースの候補を作成したり、見落としやすい確認項目を洗い出したりできます。

また、プログラムの内容を確認し、不具合につながる可能性がある処理や、改善できそうな箇所を提示することも可能です。

不具合が発生した場合には、エラーメッセージやログ、関連するコードをもとに原因の候補を整理し、調査を支援することもできます。

さらにAIエージェントを利用すれば、コードの修正後にテストを実行し、失敗した結果をもとに再度修正案を検討するといった一連の作業も支援できます。

ただし、AIが作成したテストケースだけでは、業務上の重要な条件を網羅できない場合があります。

特に基幹システムでは、実際の業務フローや例外処理を理解した担当者による確認が欠かせません。

AIによるテスト支援と、人間による業務・品質の検証を組み合わせることが重要です。

 

保守・運用への活用

基幹システムは、開発が完了すれば終わりではありません。

運用を開始した後も、不具合の修正や機能追加、業務変更への対応など、継続的な保守が必要になります。

生成AIは、この保守・運用の工程でも活用できます。

例えば、既存プログラムの内容を解析して処理の概要を説明したり、エラーが発生した際に原因の候補を整理したりすることが可能です。

また、長年利用されているシステムでは、開発当時の担当者がすでに退職していたり、仕様書が十分に残されていなかったりする場合があります。

こうした場合にも、既存コードの調査やドキュメント作成をAIが支援することで、システムの理解を進めやすくなる可能性があります。

さらに、機能追加や改修を行う際には、変更が必要な箇所の調査や修正案の作成、テストケースの洗い出しなどにも利用できます。

ただし、AIが既存システムのすべてを正しく理解できるとは限りません。

長期間運用されてきた基幹システムには、仕様書に記載されていない業務ルールや、他のシステムとの複雑な依存関係が存在する場合があります。

そのため、AIの分析結果を参考にしながらも、実際の動作や業務への影響を確認する必要があります。

生成AIは保守業務を完全に代替するものではありませんが、既存システムの調査や改修を支援する手段として、今後さらに活用が進むと考えられます。

 

 

 

エイ・エヌ・エスにおけるAI活用

エイ・エヌ・エスでは、実際のシステム開発において、要件チェックやモック作成、コード作成、テストなど、複数の工程で生成AIを活用しています。

AIにすべての開発作業を任せるのではなく、AIを活用することで効率化できる工程と、エンジニアが判断・確認すべき工程を分けながら、開発を進めています。

 

 

3.AIを活用した基幹システム開発のメリット

AIを基幹システム開発に取り入れることで、開発期間やコスト、作業効率など、さまざまな面でメリットが期待できます。

従来はエンジニアが手作業で進めていた工程の一部をAIが支援することで、作業時間を短縮し、より重要な業務へ時間を充てやすくなるためです。

ただし、AIを利用すれば必ず開発期間が短くなったり、費用が安くなったりするわけではありません。システムの規模や複雑さ、AIを活用する工程によって得られる効果は異なります。

ここでは、AIを活用した基幹システム開発で期待できる主なメリットを紹介します。

 

開発期間の短縮が期待できる

AIを活用したシステム開発のメリットの一つが、開発作業の効率化です。

従来の開発では、仕様書の作成やプログラミング、テストケースの洗い出しなど、多くの工程でエンジニアによる作業が必要でした。

生成AIを活用すれば、こうした作業のたたき台を短時間で作成できるため、開発期間を短縮できる可能性があります。

例えば、受発注管理システムの開発では、入力画面やデータ検索、登録処理など、複数の機能を実装する必要があります。

AIによってこれらのプログラムの一部を生成できれば、エンジニアはコードを一から作成する時間を減らし、業務ルールへの対応やシステム全体の調整に集中しやすくなります。

また、画面のモックを早期に作成することで、開発前に完成イメージを確認できる点もメリットです。

開発が進んでから認識の違いが判明すると、大きな手戻りが発生することがあります。早い段階で具体的な画面を共有できれば、こうした問題を減らせる可能性があります。

ただし、AIが生成した成果物の確認や修正には時間が必要です。コードを作成する時間だけでなく、設計からテストまでを含めた開発工程全体で効率化できているかを確認することが重要です。

 

開発コストを抑えられる可能性がある

開発期間の短縮は、開発コストの削減にもつながる可能性があります。

システム開発費用には、エンジニアの作業工数が大きく関係します。そのため、AIを活用して一部の作業時間を削減できれば、必要な工数を抑えられる場合があります。

例えば、仕様書やテストケースの作成、定型的なプログラムの実装などを効率化することで、従来よりも少ない工数で開発を進められる可能性があります。

特に、企業ごとの業務に合わせて構築するスクラッチ開発では、必要な機能を一つひとつ設計・実装するため、作業効率の改善が費用に影響することも考えられます。

一方で、基幹システム開発にはプログラミング以外にも多くの工程があります。

業務ヒアリングや要件定義、既存システムとの連携、データ移行、セキュリティ対策、テストなどは、AIを利用しても一定の工数が必要です。

また、AIの利用環境の整備や生成されたコードのレビューなど、新たな作業が発生する場合もあります。

そのため、「AIを使えば開発費用が半額になる」といった一律の判断はできません。

AIによって削減できる工数と、品質確保のために必要な工数を整理したうえで、費用対効果を判断することが大切です。

 

仕様変更や機能追加に対応しやすくなる

基幹システムは、企業の業務内容に合わせて継続的に改善していくものです。

導入後に新しい取引先が増えたり、業務フローが変わったり、管理したい情報が追加されたりすることもあります。

こうした変更に対応する際にも、生成AIは役立つ可能性があります。

例えば、既存のプログラムをAIに分析させ、変更が必要な箇所の候補を洗い出したり、追加機能のコード案を作成したりできます。

また、変更内容に応じたテストケースの作成を支援することで、改修作業の効率化も期待できます。

特に長期間利用されているシステムでは、コードが複雑になっていたり、当時の設計資料が十分に残っていなかったりする場合があります。

AIによるコード解析やドキュメント作成の支援は、こうしたシステムの調査にも活用できます。

ただし、AIが既存システムの構造や業務ルールを完全に理解できるとは限りません。

修正箇所だけでなく、他の機能やデータへの影響も確認する必要があります。

AIを活用することで改修作業を進めやすくなる可能性はありますが、将来的な変更に対応しやすいシステム設計や、適切な保守体制の重要性は変わりません。

 

エンジニアが重要な業務に集中できる

AIを活用するメリットは、単純に作業時間を減らすことだけではありません。

エンジニアが、より重要な業務へ時間を充てられるようになる点も大きなメリットです。

基幹システム開発では、顧客の業務を理解し、必要な機能を整理したうえで、使いやすく保守しやすいシステムを設計する必要があります。

しかし、実際の開発現場では、資料作成やコード調査、テスト準備などにも多くの時間が必要です。

こうした作業の一部をAIが支援できれば、エンジニアは顧客との打ち合わせや業務課題の整理、システム全体の設計、品質確認などに時間を使いやすくなります。

例えば、顧客から新しい機能の要望があった場合でも、単純に依頼された機能を追加するだけでは、根本的な業務課題が解決しないことがあります。

そのような場面では、現在の業務フローを確認し、本当に必要な機能を見極めることが重要です。

AIによって作業の一部を効率化できれば、こうした検討により多くの時間を充てられる可能性があります。

AI時代のシステム開発では、プログラムを作る速さだけでなく、企業の業務を理解し、適切なシステムを実現する力が、これまで以上に重要になると考えられます。

 

 

 

 

4.AIだけでは難しい基幹システム開発の課題

AIによって基幹システム開発の効率化が期待できる一方で、すべての工程をAIだけで完結させることには課題があります。

特に基幹システムは、販売管理や在庫管理、会計管理など、企業の日常業務を支える重要な仕組みです。

一部の処理に問題が発生するだけでも、受注や出荷、請求などに影響する可能性があります。

そのため、一般的な業務アプリや試作品と比べて、業務への適合性や品質、セキュリティなどを慎重に確認する必要があります。

 

複雑な業務ルールや例外処理への対応

基幹システムの開発が難しい理由の一つは、企業ごとに業務ルールが異なることです。

例えば、同じ販売管理システムでも、企業によって見積、受注、出荷、請求までの流れは異なります。

取引先ごとに価格が変わる場合や、特定の商品だけ承認が必要な場合、返品や分納などの例外的な処理が発生する場合もあります。

こうした業務ルールは、必ずしもすべてが仕様書に整理されているとは限りません。

長年の運用の中で、現場担当者の経験や判断によって対応している業務もあります。

AIは与えられた情報をもとにコードや設計案を作成できますが、伝えられていない業務ルールまで正確に把握できるわけではありません。

例えば、「在庫数を管理する機能を作成する」と指示した場合でも、入荷予定の扱いや引当処理、複数倉庫間の移動など、実際の業務で必要な条件が抜けてしまう可能性があります。

そのため、基幹システム開発では、業務担当者へのヒアリングを通じて要件を整理し、例外的な処理まで確認することが重要です。

AIがプログラムを作成できても、何を実現すべきかを正しく定義する工程は欠かせません。

 

既存システムとの連携・データ移行

基幹システムを新しく構築する場合、既存システムとの連携やデータ移行が必要になることがあります。

例えば、販売管理システムを刷新する場合でも、会計システムや在庫管理システム、外部の受発注サービスなどと連携しているケースがあります。

新しいシステムだけが正常に動作していても、これらの連携がうまく機能しなければ、業務全体に影響が出る可能性があります。

また、既存システムからデータを移行する際には、データ形式や項目の違い、重複データ、不整合などにも対応する必要があります。

AIは、データの変換処理や連携プログラムの作成、既存仕様の調査などを支援できます。

しかし、移行対象となるデータが正しいか、どの情報を引き継ぐべきか、業務上どのように利用されているかといった判断には、実際の業務やシステム構成への理解が必要です。

特に長年利用している基幹システムでは、仕様書に記載されていない連携処理や、特定のタイミングでしか実行されない処理が存在する場合もあります。

そのため、既存システムの調査やデータの確認、移行テストなどを十分に行う必要があります。

AIを活用する場合でも、システム全体の依存関係を把握し、安全に切り替えるための計画を立てることが重要です。

 

セキュリティ・性能・品質の確保

基幹システムには、顧客情報や取引情報、売上データなど、企業にとって重要な情報が保存されます。

そのため、システムのセキュリティや性能、品質を確保することが欠かせません。

AIが生成したコードは、一見正しく動作していても、セキュリティ上の問題や性能面の課題を含んでいる可能性があります。

例えば、入力内容のチェックが不十分だったり、アクセス権限の設定に問題があったりする場合があります。

また、少人数で利用するテスト環境では問題がなくても、多くの利用者が同時にアクセスする本番環境では、処理速度が低下する可能性もあります。

こうした問題を防ぐには、コードレビューやセキュリティテスト、性能テストなどを適切に実施する必要があります。

さらに、生成AIへソースコードや仕様書などを入力する際には、機密情報の取り扱いにも注意が必要です。

利用するAIサービスの契約条件やデータの取り扱いを確認し、入力してよい情報の範囲を明確にしておくことが重要です。

AIが生成したコードをそのまま本番環境へ適用するのではなく、エンジニアによる確認と十分な検証を行うことが求められます。

 

AIが生成したコードの保守性と責任の所在

基幹システムは、完成後も長期間にわたって利用されることが一般的です。

そのため、開発時に正常に動作することだけでなく、将来的な機能追加や改修を行いやすいことも重要になります。

AIによって大量のコードを短時間で作成できたとしても、その内容をエンジニアが十分に理解していなければ、後から修正する際に問題が生じる可能性があります。

例えば、複雑な処理が必要以上に増えていたり、同じような処理が複数箇所に存在していたりすると、保守に必要な工数が増えることがあります。

また、AIが生成したコードに不具合があった場合でも、AI自身が開発会社や利用企業に代わって責任を負うわけではありません。

開発会社は、AIを利用した場合でも、契約上の責任範囲に応じて品質管理や不具合対応を行う必要があります。

そのため、AIが生成したコードについても、設計方針や処理内容を理解し、必要なドキュメントを残しておくことが重要です。

AIを活用したシステム開発では、コードを作成する効率だけでなく、誰が内容を確認し、誰が保守し、問題が発生した場合にどのように対応するのかまで考える必要があります。

 

 

5.AI時代の基幹システム開発はどう変わる?

生成AIの進化によって、基幹システム開発の進め方そのものが変化しつつあります。

従来は、エンジニアが設計書をもとにプログラムを作成し、テストや修正を繰り返す方法が一般的でした。

しかし現在は、AIによってコード作成やテストなどの一部を効率化できるようになり、AIとエンジニアが役割を分担しながら開発を進める方法が広がっています。

こうした変化は、企業ごとの業務に合わせて構築するスクラッチ開発にも影響を与えると考えられます。

 

従来のスクラッチ開発とAI活用型開発の違い

スクラッチ開発とは、既存のパッケージソフトに業務を合わせるのではなく、企業の要件に合わせてシステムを個別に設計・開発する方法です。

業務に適した機能を柔軟に構築できる一方、設計やプログラミングに多くの工数が必要になる場合があります。

AI活用型のスクラッチ開発では、この開発プロセスに生成AIを取り入れます。

例えば、要件整理や仕様書作成の補助、画面モックの作成、コード生成、テストケースの作成などをAIが支援します。

従来はエンジニアが一から作成していた成果物について、AIがたたき台を用意し、それをエンジニアが確認・修正することで開発を進められます。

これにより、開発作業の一部を効率化できる可能性があります。

ただし、AI活用型開発は、従来の開発工程をすべて省略する方法ではありません。

顧客の業務を理解して要件を決めることや、システム全体の設計、品質確認などは引き続き重要です。

従来のスクラッチ開発とAI活用型開発の大きな違いは、システムを個別に構築するという考え方ではなく、その開発プロセスにAIを取り入れる点にあります。

 

AIエージェントによる開発の自動化

AI時代のシステム開発で注目されている技術の一つが、AIエージェントです。

従来の生成AIは、人間が質問や指示を入力し、それに対して文章やコードを生成する使い方が中心でした。

一方、AIエージェントは、与えられた目的に沿って必要な作業を判断し、複数のステップを進めることができます。

例えば、「既存システムの不具合を調査して修正する」という指示に対して、関連するコードを調査し、修正案を作成し、テストを実行するといった作業です。

開発ツールと連携するAIエージェントでは、複数のファイルを変更したり、テスト結果を確認して修正を繰り返したりすることも可能になっています。

こうした技術が発展すれば、エンジニアが細かな作業を一つひとつ実行するのではなく、AIへ一定の作業を任せ、その結果を確認する開発スタイルがさらに広がると考えられます。

ただし、AIエージェントが自律的に作業を進められることと、すべての判断を任せられることは別です。

特に基幹システムでは、AIによる変更が他の機能や業務へ影響する可能性があります。

そのため、AIに任せる作業範囲や権限を明確にし、重要な変更についてはエンジニアが確認する必要があります。

 

AIとエンジニアが協働する開発体制

AIの活用が進むことで、エンジニアの役割も変化していくと考えられます。

これまでは、プログラムを正確に作成する技術が重要でした。今後もその知識は必要ですが、それに加えて、AIを適切に活用し、生成された成果物を評価する能力が求められます。

例えば、AIが複数の実装方法を提示した場合、どの方法が業務要件に適しているのかを判断する必要があります。

また、AIが作成したプログラムに問題がないか、セキュリティや保守性、将来的な拡張性まで考慮することも重要です。

そのため、AI時代のエンジニアには、プログラミングの知識だけでなく、業務理解や要件定義、システム設計、品質管理などの能力がより一層求められるでしょう。

AIがコード作成や情報整理などを支援し、エンジニアが業務課題の解決や重要な判断に集中する。

こうした役割分担によって、開発効率と品質の両立を目指すことができます。

AIがエンジニアを完全に置き換えるのではなく、AIとエンジニアがそれぞれの強みを活かして開発を進めることが、今後の基幹システム開発では重要になると考えられます。

 

フルオーダーメイド開発の可能性が広がる

従来、企業ごとの業務に合わせたフルオーダーメイドのシステム開発は、柔軟性が高い一方で、開発費用や期間が課題になることがありました。

そのため、システムを導入する際に、既存のパッケージソフトやクラウドサービスを選択する企業もあります。

しかし、パッケージソフトでは自社独自の業務に対応しきれず、運用方法をシステムに合わせる必要が生じる場合があります。

AIによってスクラッチ開発の一部を効率化できれば、従来は費用や期間の面で導入を見送っていた企業にとっても、フルオーダーメイド開発を検討しやすくなる可能性があります。

例えば、独自の受発注ルールや複雑な在庫管理、複数システムとの連携など、企業ごとに異なる要件へ対応する際にも、AIを活用した開発効率の向上が期待できます。

ただし、AIを活用すれば必ずスクラッチ開発が最適になるわけではありません。

標準的な業務であれば、パッケージソフトやクラウドサービスを利用する方が適している場合もあります。

重要なのは、開発手法を先に決めるのではなく、自社の業務内容や必要な機能、予算、将来的な運用まで考慮して選択することです。

AIの進化によって、これまで以上に多様な開発方法を検討できるようになる可能性があります。

その中で、企業がシステムに業務を合わせるだけでなく、自社の業務に合ったシステムを構築するという選択肢も、今後さらに広がっていくと考えられます。

 

 

比較項目 従来のシステム開発 AI活用が進んだ未来の開発
開発の進め方 エンジニアが各工程の作業を中心となって進める AIとエンジニアが役割を分担しながら開発を進める
設計・仕様書作成 エンジニアが仕様書や設計資料を作成する AIがたたき台を作成し、エンジニアが確認・調整する
プログラミング エンジニアがコードを作成・修正する AIがコード生成や修正を支援し、エンジニアが品質を確認する
テスト・不具合対応 テスト項目の作成や不具合調査を人間が中心となって行う AIがテスト作成・実行や原因調査を支援し、人間が結果を検証する
エンジニアの役割 設計・実装・テストなどの作業を幅広く担当する 業務理解・要件定義・設計判断・品質管理の重要性が高まる
開発期間・コスト 個別の設計・実装に多くの工数が必要になる場合がある AIによる作業効率化で期間短縮・コスト削減が期待できる
開発手法の選択肢 費用や期間の面から個別開発を見送る場合がある フルオーダーメイド開発を検討しやすくなる可能性がある

 

 

6.AIを活用した基幹システム開発を成功させるポイント

AIを活用した基幹システム開発では、最新のAIツールを導入すること自体が目的にならないよう注意が必要です。

重要なのは、自社の業務課題を明確にし、その解決に向けてAIをどのように活用するかを考えることです。

また、AIを活用した開発であっても、要件定義や品質管理、保守・運用といった基本的な考え方は変わりません。

ここでは、AIを活用した基幹システム開発を成功させるために、押さえておきたいポイントを紹介します。

 

AI導入よりも業務課題の整理を優先する

AIを活用したシステム開発を検討する際は、最初に自社の業務課題を整理することが重要です。

例えば、「Excelによる管理が煩雑になっている」「複数のシステムへの二重入力が発生している」「既存システムが古く、業務の変化に対応できない」といった課題が考えられます。

こうした課題を明確にしないままAIの活用を進めても、期待した効果を得られない可能性があります。

基幹システムの開発では、まず現在の業務フローを確認し、どこに問題があるのか、どのような状態を実現したいのかを整理する必要があります。

そのうえで、必要な機能やシステムの構成を検討し、開発工程のどこにAIを活用できるかを判断します。

また、すべての業務をシステム化することが最適とは限りません。

業務フローそのものを見直すことで、システムに必要な機能を減らせる場合もあります。

AIを使って何を作るかではなく、自社の業務課題を解決するために何が必要なのかを考えることが、システム開発の出発点となります。

 

AIに任せる工程と人間が担う工程を分ける

AIを活用した開発では、AIが得意とする作業と、人間による判断が必要な作業を分けることが重要です。

例えば、仕様書のたたき台作成やコード生成、テストケースの洗い出しなどは、AIによる効率化が期待できる工程です。

一方で、業務要件の確定やシステム全体の設計、セキュリティに関する重要な判断、最終的な品質確認などは、エンジニアが責任を持って進める必要があります。

また、AIが生成した成果物について、誰が確認するのかを明確にしておくことも大切です。

例えば、AIが作成したプログラムを別のAIでレビューする方法も考えられますが、それだけで品質が保証されるわけではありません。

実際の業務要件を満たしているか、既存機能に影響がないかなどを、人間が確認する必要があります。

AIの活用範囲を広げる場合も、最初からすべての工程を自動化するのではなく、効果を確認しながら段階的に進める方法が考えられます。

AIによる作業の効率化と、人間による判断・品質管理を組み合わせることが、安定したシステム開発につながります。

 

開発会社のAI活用力と業務理解力を確認する

AIを活用した基幹システム開発を外部へ依頼する場合は、開発会社の選定も重要です。

AIツールを利用しているという理由だけでなく、どのような工程でAIを活用し、どのように品質を確保しているのかを確認する必要があります。

例えば、要件定義や設計、プログラミング、テストなど、具体的な活用範囲を確認するとよいでしょう。

また、AIが生成したコードのレビュー体制や、セキュリティ対策、開発後の保守体制なども確認しておきたいポイントです。

特に基幹システムでは、AIの技術力だけでなく、企業の業務を理解する力が求められます。

販売管理や在庫管理、生産管理などの業務を理解していなければ、必要な機能や例外処理を適切に設計することは難しいためです。

そのため、開発会社を選ぶ際には、AIの活用方法に加えて、基幹システムの開発経験や業務理解力、要件定義から保守までの対応範囲を確認することが重要です。

AIを活用できることと、企業の業務に適した基幹システムを構築できることは、必ずしも同じではありません。

AIの活用力と、従来から求められてきたシステム開発の専門性の両方を確認することが大切です。

 

開発後の保守・運用まで見据えて計画する

基幹システムは、完成後も長期間にわたって利用することが一般的です。

そのため、開発時の期間や費用だけでなく、導入後の保守・運用まで考慮する必要があります。

例えば、AIを活用して短期間でシステムを開発できたとしても、プログラムの構造が複雑で、後から修正しにくい状態では、保守に多くの工数がかかる可能性があります。

また、開発を担当したエンジニア以外でも内容を理解できるよう、仕様書や設計資料などを適切に整備しておくことも重要です。

AIによって生成されたコードについても、処理内容や設計意図を確認し、将来的な機能追加や改修に対応できる状態を維持する必要があります。

さらに、システムの障害対応やセキュリティ更新、法改正に伴う変更など、運用開始後に必要となる対応も想定しておくことが大切です。

基幹システムは企業の業務を支える重要な仕組みであるため、開発時の効率化だけでなく、安定して使い続けられることが求められます。

AIを活用した開発であっても、長期的な保守性や拡張性、運用体制まで含めて計画することが、システムを継続的に活用するためのポイントです。

 

 

7.まとめ|AIで基幹システムはどこまで作れるのか

生成AIの進化によって、基幹システム開発では要件整理や設計、プログラミング、テスト、保守など、さまざまな工程でAIを活用できるようになっています。

AIを適切に活用することで、開発期間の短縮やコスト削減、作業効率の向上などが期待できます。

また、AIエージェントの発展によって、コードの調査や修正、テストなど、複数の作業をAIが支援する開発方法も広がりつつあります。

一方で、企業ごとに異なる業務ルールへの対応や、既存システムとの連携、セキュリティ・品質の確保など、AIだけでは判断が難しい部分も残されています。

そのため、AIを活用した基幹システム開発では、AIが得意とする作業と、エンジニアが担うべき役割を適切に組み合わせることが重要です。

今後、AIの活用がさらに進むことで、これまで費用や期間の面で導入が難しかったフルオーダーメイドの基幹システムも、検討しやすくなる可能性があります。

ただし、最も重要なのは、AIを利用すること自体ではなく、自社の業務に適したシステムを構築することです。

エイ・エヌ・エスでは、基幹システムの開発経験を活かしながら、要件チェックやモック作成、コード作成、テストなどにAIを取り入れたシステム開発に取り組んでいます。

AIを活用した基幹システムの新規開発や、既存システムの見直しをご検討の際は、お気軽にご相談ください。

 

 

 

 

 

執筆者

株式会社エイ・エヌ・エス 常務取締役

システムインテグレーション事業部 第1グループ長 プロジェクトマネージャー

H.W

1989年、株式会社エイ・エヌ・エスに入社。入社後、SEとしての技術力と営業力を磨き、多くのプロジェクトに参画。要件定義から設計・開発、運用まで、上流から下流工程を幅広く経験する。現在はプロジェクトマネージャーとして、大規模プロジェクトを数多く成功に導く。「システムの導入効果を最大限感じてもらうこと」をモットーに、顧客特性に応じた最適なシステム提案を心がけている。

お客様の業界・課題に合った事例や支援内容も個別にご提案可能です。
まずはお気軽にご連絡ください。

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