Column お悩み解決コラム

サービスに関するご相談は
こちらのフォームより受け付けております。

システム保守の重要性と保守引継ぎサービスの活用 ― 安定稼働を支える体制づくりとは

システム保守の重要性と保守引継ぎサービスの活用 ― 安定稼働を支える体制づくりとは

公開日:2020年8月13日 更新日:2025年11月17日

◆システム保守はなぜ必要か

現代の企業において、ITシステムは業務運営の根幹を支える重要な基盤です。業務効率化や人員不足の解消に役立つ基幹システムですが、安定的に稼働させるためには継続的な保守が不可欠です。「安定して動作しているから保守は不要」「重要性が低いから必要ない」と考えがちですが、保守を行わないことで発生するリスクは大きく、システム障害による業務中断は売上や信頼の損失に直結します。

 

システム保守は、障害や不具合の解消だけでなく、予防的なメンテナンスやセキュリティ対応、データ保護を含む幅広い業務です。これにより、企業は安心して業務に集中できる環境を確保できます。

 

 

◆システム保守の役割と範囲

 

システム保守は、企業が業務を円滑に進めるために欠かせない活動であり、大きく分けて「障害対応(是正保守)」「予防保守」「適応保守」「改善保守」の4つの領域に分類されます。それぞれの役割を理解し、継続的に実施することで、システムは安定して稼働し、業務やビジネスの停止リスクを最小限に抑えることが可能になります。

 

まず「障害対応(是正保守)」は、システムに不具合や障害が発生した際に迅速に対応し、正常な状態に戻すことを目的としています。システムの停止や業務への影響を最小限に抑えるため、障害発生時には原因の特定から修復までを迅速に行うことが重要です。

 

次に「予防保守」は、障害が発生する前に潜在的な問題を把握し、未然に対策を講じる活動です。ログの分析や定期点検、システムの更新などを通じて、障害の発生を未然に防ぐことが可能となります。

 

適応保守」は、法改正や業務ルールの変更、OSやミドルウェアのバージョンアップに伴うシステムの適合性を維持するための保守です。これにより、システムが常に最新の環境や業務条件に対応し続けられるようになります。

 

そして「改善保守」は、システムの機能や性能を向上させ、より効率的に業務を行えるようにする活動です。ユーザーからのフィードバックや運用データを基に、操作性の向上や業務効率化を目的とした改善を行います。

 

これら4つの保守をバランスよく継続的に実施することにより、システムは長期にわたって安定稼働し、企業の業務を支える堅牢な基盤となります。また、障害時の迅速な対応だけでなく、予防的なメンテナンスや改善活動を組み合わせることで、コストの削減や業務効率化も同時に実現できます。結果として、企業は安心してシステムを活用でき、ビジネスを止めることなく成長戦略を推進できる体制を整えることが可能となります。

 

 

◆システム保守に必要なスキルと体制

システム保守は、企業のIT環境を安定的に運用し、業務を止めないための重要な活動です。障害対応や予防保守、適応保守、改善保守といった複数の領域をカバーするためには、高度な技術力だけでなく、組織的な体制やプロセスの整備も不可欠です。特に、システム保守においては「プログラミングスキル」「インフラ・ハードウェア知識」「データ管理能力」「セキュリティ対応力」の4つのスキルが重要です。ここでは、それぞれのスキルの内容と保守体制のポイントについて詳しく解説します。

 

1. プログラミングスキル

プログラミングスキルは、システム保守の基盤となる能力です。システムのコード構造を理解し、障害発生時に迅速かつ正確に原因を特定できることが求められます。例えば、業務システムが特定の条件でエラーを起こす場合、どのモジュールや処理フローに問題があるのかを読み解き、必要な修正を実施する力が必要です。また、既存コードの改修だけでなく、新たな改善や機能追加にも対応できる柔軟性も重要です。コードの理解力が高いほど、障害の再発防止策を設計する際の判断も正確になります。

 

2. インフラ・ハードウェア知識

システムはソフトウェアだけでなく、PCやサーバー、ネットワークといった基盤の上で稼働しています。そのため、インフラやハードウェアの知識も不可欠です。例えば、サーバーのメモリやディスクの状態、ネットワーク機器の設定や通信状況などを把握する力が必要です。障害が発生した際に、ソフトウェアに原因があるのか、それとも基盤側に問題があるのかを切り分ける能力が求められます。インフラ知識が豊富であれば、障害対応の迅速化だけでなく、事前の予防保守やリスク低減策の立案にも活用できます。

 

3. データ管理能力

システム保守においてデータは企業の重要資産です。データ管理能力とは、バックアップやリカバリ、障害復旧の手順を理解し、確実に実行できる力を指します。障害発生時には、データの破損や消失を防ぐため、適切なバックアップ体制と復旧手順の整備が必須です。また、定期的なバックアップの確認や復旧訓練を実施することで、実際の障害時にも迅速かつ安全に対応できる体制を構築できます。データ管理能力は、システムの安定稼働だけでなく、事業継続計画(BCP)の観点でも重要です。

 

4. セキュリティ対応力

近年、サイバー攻撃や内部脅威のリスクは増大しています。そのため、システム保守担当者には、セキュリティ対応力も求められます。具体的には、脆弱性への即応力や、攻撃の兆候を早期に察知する監視能力、最新の脅威情報を常にアップデートし、防御策を強化する力が必要です。これにより、システムの安定稼働を守るだけでなく、企業の情報資産や顧客データを保護する役割も果たせます。

 

システム保守においては、プログラミングスキル、インフラ・ハードウェア知識、データ管理能力、セキュリティ対応力という4つのスキルが不可欠です。これらを持つ人材を適切に配置し、明確な体制と情報共有の仕組みを整えることで、障害対応の迅速化、障害予防、システムの改善や安全性強化が実現できます。結果として、企業はシステムの安定稼働を確保し、業務を止めることなくビジネスを継続する体制を構築することが可能となります。

 

 

◆システム保守の属人化リスク

属人化とは、特定の担当者に業務が依存し、その人が不在になると作業が止まってしまう状態を指します。システム保守業務は専門性が高く、設計意図や過去の改修履歴を把握するには時間がかかるため、属人化が起きやすい分野です。もし担当者が退職・休職・異動した場合、以下のような問題が生じます。

 

・障害発生時に復旧まで時間がかかる
・不具合の原因特定が遅れ、業務停止が長期化
・改修や追加開発ができず、システムが時代遅れに
・情報漏えいやセキュリティリスクが高まる

 

 

◆システム保守における属人化防止の重要性と対策

 

システム保守は、企業のIT基盤を安定的に運用し、業務を止めないための重要な活動です。しかし、保守業務が特定の担当者に依存してしまう「属人化」は、多くの企業で大きな課題となっています。属人化が進むと、障害対応の遅延、運用ミス、改善提案の停滞など、システム運用全体にリスクが広がります。属人化を防ぐためには、組織的な取り組みと適切な体制づくりが不可欠ですが、社内リソースだけでこれを実現するには、人材やコストの面で大きな負担となることが少なくありません。

 

属人化を解消するには、「体制の二重化」と「ドキュメント整備」が鍵です。
ただし、自社リソースだけでこれを実現するには人材・コストの両面で負担が大きく、現実的ではありません。

 

1. ドキュメント化とナレッジ共有

属人化防止の基本は、情報のドキュメント化です。システムの設計仕様、コード構造、インフラ構成、運用手順、障害対応手順、バックアップ・リカバリ手順などを明文化し、チーム全体で共有することが重要です。さらに、社内Wikiやナレッジ管理ツールを活用して、障害事例や改善履歴を簡単に検索・参照できる環境を整えることも効果的です。しかし、これらを社内だけで整備するには、ドキュメント作成や更新、ナレッジ整理に多くの工数がかかります。定期的な見直しも必要なため、人的リソースが限られている場合は大きな負担となります。

 

2. 標準化と手順化

作業の標準化も属人化防止に不可欠です。障害対応やバックアップ作業、システム更新作業を誰が行っても同じ結果が得られるよう手順書を作成し、操作方法だけでなく目的や注意点も明記することが求められます。自動化ツールやスクリプトを活用することで、手作業に依存する部分を減らし、再現性のある作業を実現できます。標準手順の策定や自動化ツールの導入には専門知識が必要であり、社内でこれを全て賄うには教育・習熟の時間やコストが膨大になります。

 

3. クロストレーニングとレビュー体制

属人化を防ぐためには、複数の担当者が同じ領域の知識やスキルを持つことが重要です。そのために、クロストレーニングやレビュー体制を整備します。担当者同士で手順や運用ポイントを共有し、作業履歴をレビューすることで、個人依存を減らせます。しかし、クロストレーニングや定期レビューは、業務負荷が高くなる上に、経験豊富な人材が複数必要です。小規模なチームでは対応が難しく、負担が大きくなる傾向があります。

 

上述のように、属人化防止の取り組みを自社リソースだけで完璧に実現することは、人材・コストの両面で大きな負担となり、現実的ではない場合があります。

 

そこで有効な選択肢が外部委託です。システム保守の専門企業に運用や障害対応、ナレッジ管理の一部を委託することで、社内負荷を大幅に軽減できます。外部委託を活用するメリットは、経験豊富な専門家による迅速な対応や、最新の技術・セキュリティ情報の活用、作業手順やナレッジの整理まで含めて支援してもらえる点です。社内では対応が難しい高度な運用や自動化の導入支援も受けられるため、属人化を防ぎつつ、効率的で安全な保守体制を構築できます。企業は個人に依存しない安定した保守体制を構築し、システムの安定稼働と業務継続性を確保することが可能となります。

 

◆システム保守代行サービスの必要性

近年、企業のITシステム環境は複雑化し、業務に不可欠な基幹システムから業務支援ツールまで、多種多様なシステムが導入されています。しかし一方で、システム開発会社の動向に変化が見られます。従来、開発したシステムの保守対応まで一貫して提供していた会社も多くありましたが、近年では「開発中心」「SES中心」へと事業モデルをシフトするケースが増えています。この結果、システムの保守を継続的に提供する企業が減少し、保守を受けられない企業、いわゆる「保守難民」と呼ばれる状況が増加しています。

 

こうした背景には、保守作業自体の収益性の低さや、短期の開発案件に人材を集中させたい開発会社の経営方針があります。そのため、既存システムの保守対応は後回しにされるケースが多く、結果として企業側は「誰も中身を把握していないシステム」を使い続けざるを得ない状況に陥ることがあります。この状態は非常に危険で、障害発生時の対応遅延や、セキュリティリスク、業務停止など重大な問題につながる可能性があります。

 

さらに、社内に保守担当者がいても、人材の退職や転職により引継ぎが不十分な場合、システム運用の属人化が進むリスクがあります。保守担当者しか理解していない仕組みや運用ルールが存在すると、その人が不在の間に障害が発生した場合、迅速な対応が困難となります。また、古いシステムやカスタマイズされたシステムでは、ドキュメントやソースコードが十分に残っていないことも少なくなく、保守の難易度をさらに高めています。このような状況では、企業はシステム運用におけるリスクを抱えながら業務を続けざるを得ないことになります。

 

こうした課題を解決する手段として、近年注目されているのが「システム保守引継ぎサービス」です。

 

保守引継ぎサービスの流れ

 

1.現行システムの調査・解析

ソースコード、データベース構造、運用手順を分析し、全体像を把握。ソースコードやドキュメントが不足している場合でも、実際の動作やログの分析を通じてシステムの仕組みを把握し、再現可能な範囲で業務フローや処理ロジックを整理します。

 

2.保守・メンテナンス体制の構築

監視・バックアップ・障害対応ルールを明確化し、担当体制を整備。属人化していた知識をチームとして共有可能な形に整え、継続的に運用できる体制を構築します。

 

3.日常保守・障害対応

トラブル発生時の即時対応に加え、定期的なメンテナンスを実施。専門知識を持つ保守チームが継続的に運用を行うため、障害発生時にも迅速な対応が可能です。 

 

4.継続的改善と報告

システムの課題や改善提案をレポートし、業務効率化を支援。

 

5.セキュリティ更新・運用支援

OS更新や脆弱性対応を随時実施し、安全な稼働環境を維持。

 

昨今のIT環境の複雑化や開発会社の事業モデルシフトを踏まえると、保守引継ぎサービスの需要は今後も拡大すると考えられます。企業がシステムを安全かつ効率的に運用し続けるためには、既存システムの状況を正確に把握し、継続的な保守体制を確立することが不可欠です。特に、担当者の退職や人材不足といったリスクを抱える企業にとって、外部の専門チームによる保守引継ぎは、安定した業務運用と長期的なシステム戦略を支える現実的かつ有効な手段といえるでしょう。

 

 

◆保守引継ぎで得られる主なメリット

 

業務の安定化と生産性向上

従来、社内の担当者がシステム障害や不具合の対応に追われる場合、日常業務に集中できず、業務効率が低下することがありました。保守引継ぎサービスを活用すれば、専門の保守チームが障害対応や定期メンテナンスを担当するため、社内スタッフは本来の業務に専念できます。特に、定期的な予防保守や障害対応が迅速に行われることで、突発的なトラブルによる業務停滞を防ぎ、全体の生産性向上につながります。

 

迅速な対応とダウンタイムの短縮

システムに障害が発生した場合、迅速な原因特定と復旧作業は業務の継続性に直結します。保守引継ぎサービスでは、既存システムの構造や運用ルールを把握した専門チームが対応するため、障害発生時に即座に原因を特定し、復旧作業に着手することが可能です。これにより、システムのダウンタイムを最小限に抑えることができ、業務の中断による損失やトラブルを未然に防ぐことができます。特に基幹システムや業務フローに直結するシステムでは、迅速な対応は企業経営上の重要なリスク管理手段となります。

 

長期的な安定稼働

保守引継ぎサービスは、単発の障害対応だけでなく、長期的なシステム安定稼働を実現するための取り組みも含まれます。定期的なシステム更新、セキュリティ強化、性能改善などを継続的に実施することで、システムの信頼性を維持します。特に、セキュリティリスクや老朽化によるトラブルを未然に防ぐことができるため、企業は安心してシステムを運用し続けることが可能です。長期的な視点で保守を行うことで、予期せぬトラブルによる業務停止や情報漏えいリスクを最小化できます。

 

コストの最適化

自社で専任の保守チームを抱える場合、人材採用や教育、継続的な人件費など、運用コストは大きくなります。保守引継ぎサービスを利用すれば、専門知識を持つ外部チームに保守を委託できるため、社内で専任体制を整えるよりも効率的な運用が可能です。必要な作業に応じた柔軟な契約形態を選択できることも多く、予算に応じた運用コストの最適化が実現できます。また、障害対応の遅延や業務停滞による間接的コストも削減できるため、全体として経済的メリットが大きくなります。

 

将来的な拡張・再構築に備えられる

保守引継ぎサービスでは、障害対応や運用作業の過程でシステムの情報を整理・記録し、ナレッジとして蓄積します。この保守データは、将来的なシステム拡張や再構築、機能追加の際に非常に有用です。既存システムの処理フローやデータ構造、運用ルールを把握している状態であれば、新たなシステム開発や改修時にスムーズに移行作業を行うことができます。結果として、再構築や機能追加の計画策定が効率化され、企業のIT戦略にも柔軟に対応できる体制を整えることが可能です。

 

 

◆システム保守の導入・引継ぎ

 

エイ・エヌ・エスでは、創業35年以上の実績を基に、オーダーメイドシステムの開発・保守・再構築までを一貫して支援しています。特に保守引継ぎサービスは、打ち切りや担当者不在などで悩む企業に最適です。解析・調査を行い、最短1ヶ月で保守開始が可能です。

 

【提供サービス】

・IT-Trust (オーダーメイドのシステム導入で企業のDX推進を支援)
https://www.ans-net.co.jp/

・システム再構築(業務時間を削減し、生産性向上を支援するシステム再提案が可能)
https://www.ans-net.co.jp/lp/rebuilding/

・保守引継ぎサービス(最短1ヶ月でシステム保守の引継ぎが可能)
https://www.ans-net.co.jp/lp/maintenance/

・IT相談サービス(企業様が抱えるITに関するお悩み・ご相談を無料で受付)
https://www.ans-net.co.jp/it-advice/

・内製化支援サービス(システム開発の内製」を支援し、DX(デジタル変革)推進)
https://www.ans-net.co.jp/lp/insourcing/

 

 

 

お客様の業界・課題に合った事例や支援内容も個別にご提案可能です。
まずはお気軽にご連絡ください。

「システム保守の重要性と保守引継ぎサービスの活用 ― 安定稼働を支える体制づくりとは」に関連する記事

DXの推進を実現させるオーダーメイドの業務システム開発

DXの推進に求められている現代において
必要不可欠な”システム”業務に合った
最適なオーダーメイドのシステムを導入することで、
DX推進を支援します。